中田よ、目を覚ませ-。中日落合博満監督(54)が13日、悩める右腕・中田賢一投手(26)に猛ゲキを飛ばした。14日からのオリックス戦(京セラドーム大阪)に備えて甲子園での練習を見守り、巻き返しのキーマンとして15日の先発が予想される中田を指名。オリックス清原の巨人時代に重ねるなど期待の大きさを示し、制球重視をあらため、荒れ球を取り戻すよう求めた。

 昼下がりの甲子園、落合監督は6月の日差しを受けながら「日向ぼっこをしに来たんだよ」とうそぶいていた。だが、悩める右腕・中田の話になると声のトーンが変わった。

 「今までもっとできるのになと思うやつをいっぱい見てきた。1番もったいないと思ったのは清原だよ。今の中田と一緒や。普通にやっていればこれだけ勝てるというのを自分から捨てたんだ。レベルアップするのにも段階を踏んでいかないといけないんだよ」

 昨季チームトップの14勝をあげた中田はここまで4勝5敗。4月29日以来、6戦連続で勝ち星がない。その原因として指揮官があげたのが荒れ球が消えたことだ。昨季、四球王の中田はキャンプで制球力に磨きをかけた。その一方で最大の武器である球威が落ちた。落合監督はこの2つに因果関係があると考え、4年目の中田が制球を求めたことを時期尚早と判断した。

 そして、その姿を重ねたのが巨人時代の清原だった。「巨人にきて1、2年目にあいつを見て、これは苦労するだろうなと思った。だれが吹き込んだんだろうな。いいものが崩れるのは簡単だよ。でも、元に戻すのは難しいんだ」。落合監督の目にはFAで西武から巨人に移籍した清原が本塁打を求めるあまり、広角に打てる技術を発揮できていないと映っていた。

 波に乗れないチームは現在、首位阪神に8・5ゲーム差をつけられている。落合監督は浮上のカギを先発の安定と考え、中でも中田の復活を望んでいる。「彼にも将来があるし、チームにも将来がある。あいつにやってもらわないとうちは成り立たない。この間の試合だってつなげば勝てた。でも、それでは何も残らない」。中田が前回先発した8日楽天戦では1-1のまま9回まで引っ張った結果、最終回に4点を奪われて負けた。それでも中田の復調にとってプラスなら1敗は惜しくないとさえ言う。

 15日オリックス戦に先発が予想される中田は甲子園のブルペンで投球練習。「勝つことが何よりの薬です。だめならローテを外れるという危機感は常に持っています」と悲壮感を漂わせた。チームの命運を握る右腕は指揮官の期待にどんな答えを見せてくれるのか。【鈴木忠平】