<ロッテ10-9阪神>◇15日◇千葉マリン

 2回が終わって「や~めた」ファンはびっくりしたことだろう。6回3点、8回4点、そして9回の2点で同点。なんと7点差を追いついてしまった。打線を引っ張ったのは金本。このゲームをきっかけに、チームの失速を恐れた主砲の無言の檄(げき)に、周囲がこたえた。結局、投手陣が踏ん張れず、今季初の3連敗。交流戦首位の座からも陥落した。でも大丈夫。底力をみせた打線が、再スパートを予告してみせた。

 ジェットコースターのような9イニングだった。千葉マリンの左翼席はため息、大歓声、そして最後に悲鳴が待っていた。渡辺がズレータに決勝打を浴び、大乱戦の幕は閉じた。2度目のサヨナラ負けで今季初の3連敗。ロッテには1勝3敗となり、交流戦の対戦チーム別でも初の負け越しとなった。

 「昨日もそう。打つほうは追いかけていったから、責められん」。岡田監督は疲れ切った表情を見せた。それでも、この試合は2回までに7点をリードされながら、9回に同点に追いついた。驚異の反撃を引っ張ったのは、主砲のバットだ。

 7点を追う6回表無死二、三塁。金本はセンターに痛烈な打球を見舞った。犠飛となり、1点を返す。焼け石に水?

 そうはならなかった。金本はこの打席での心境を明かした。

 「次(の試合)がどうとかじゃなく、どういうプレーをするか。今日は個人的には気合が入ったよ」。先発投手陣に崩壊の兆候が見られ、追いかける展開が多くなってきた。快進撃と周囲は騒いでも、主砲の心に危機感が募る。この試合をきっかけに失速することを危惧(きぐ)した。だから点差があっても、目の前の1打席に集中した。

 続く打席は8回だ。新井が中前打で出塁。右腕小野の甘いスライダーを見逃さなかった。ジャストミートした打球は右翼席上段まで飛んだ。4点差に詰める11号2ラン。先頭打者で迎えた最終回には、左中間を破る二塁打を放った。この3打席いずれもヒットで続いた桧山は言う。「底力を見せられた」。主砲を中心に、打線は燃えに燃えた。気がつけば、7点差を追いついた。

 昨年の千葉マリンでも、似たような光景があった。6月16日の同カード。2-7の劣勢から、9回にミラクルの9得点で大逆転勝ち。決勝打は金本のバットから生まれた。この試合を落とせば、チームは借金「10」の大台に達するところだった。苦しい状況に立たされると、金本は強い。

 「このまま、ズルズルと行くのか。3連敗で歯止めをかけるのか」。まだ貯金は「19」もあるが、シーズンの流れを変えまいと奮起したアニキの姿。先発投手陣に伝わらないはずがない。【田口真一郎】