<ソフトバンク3-2楽天>◇27日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクが後半戦もサヨナラ勝ちで「開幕」した。楽天9回戦(北九州)。2-2の9回裏2死から一、三塁とチャンスを広げ、本多雄一内野手(23)が中前へサヨナラ適時打を放った。8回無死満塁のピンチを好守で救った男がバットでも発奮した。球団初となる開幕2戦連続サヨナラ勝利で勢いに乗った開幕ダッシュをほうふつさせる、今季7度目のサヨナラ勝利。6月の月間勝ち越しも決め、首位奪回へ加速だ。

 中前に抜けた本多のサヨナラの打球が号砲だった。3カ月前、同じ楽天との開幕戦と同じ歓喜の輪がグラウンドに現れ、王監督の腕が小倉の夜空に突き刺さった。「いやあ、良くねぇ。本多はその前からいい当たりをしていたから。最初の試合だったし、しんどいのを取れて良かった」。興奮でつい言葉が速くなる。今季7度目のサヨナラ勝ち。後半戦「開幕」もホークスが劇的に飾ってみせた。

 交流戦初優勝の勢いを大切にした。「どのチームも弾みをつけたいと思っているんだ」。王監督の執念がにじんだのは、2回2死。柴原が一塁に駆け込んだ際、一塁手吉岡の足がベースを離れたとして、佐藤一塁塁審へ首を大きく振りながら、抗議。駆け足で詰め寄り、地面に残った吉岡のスパイク跡を指さした。その「熱」はナインに伝導した。

 ソロ2発の楽天に対し、打線をつないで2度追いついた。2-2の8回無死満塁。最大のピンチで、本多が草野の二塁ゴロで勝負に出た。本塁アウトを狙った“拝み捕り”でボールをつかみ、必死に封殺。「自分の捕る場所が分かってきた」と昨年よりひと回りサイズダウンしたグラブで、好守を演じた。残り2人も打ち取ると、球場はこの日2番目の盛り上がりをみせた。王監督は「守り切ったのが大きい」とうなずいた。

 サヨナラへの伏線は9回2死走者なしから結実した。松田が四球を選び、山崎がフルカウントから右前へ運ぶ。「まさか回ってくるとは。積極的に行こうと思った」。小山の2球目に迷わずバットを振り抜いた本多が、クライマックスでスポットライトを浴びた。

 1点差試合は3試合連続。緊迫戦に競り勝ち、チームの勢いは増した。全員野球の力を感じた本多は鳥肌を立てていた。「こういう試合をものにできて良かった。監督が頭(初戦)を取ろうと言っていたので、絶対に取る気持ちでした。チームの勢い?

 もちろん肌で感じています」。

 今季北九州では3戦3勝で、6月の月間勝ち越しも決めた。「今年はこんな戦いで、うちもカーンと行く力もない。1つ1つやるしかない。前途多難を思わせる勝ち方だなあ」。首位西武とは2・5ゲーム差のままでも、王監督のほおは緩みっぱなしだった。「おっと、道中は長いんだ」。移動バスに乗り込む前にトイレに寄って、さらに気分はすっきり。「勝って帰りたいなあ」。明るい声で出発した「我が家」、福岡ヤフードームへ笑顔で帰宅した。【押谷謙爾】