<ソフトバンク4-5楽天>◇10日◇福岡ヤフードーム

 ハーラーダービー単独トップを快走する楽天岩隈久志投手(27)が10日、パ・リーグ投手部門で3冠に立った。この日のソフトバンク戦(福岡ヤフードーム)で7回4安打1失点(自責0)で15勝目を挙げ、近鉄時代の03、04年にマークした自己最多に並んだ。1位だった勝率に加え、防御率でも日本ハム・ダルビッシュを抜いた。9回、一打サヨナラ負けのピンチもリリーフ陣が辛うじて逃げ切り、チームの連敗も2で止まった。

 白星が消えかかった最大のピンチでも、岩隈は仲間を信じて笑っていた。1点差に詰め寄られ、なおも2死満塁。「本当にヒヤヒヤですよ。でも木谷さんが抑えてくれると信じていました」。開幕から2試合連続でサヨナラの悲劇に見舞われたヤフードーム。辛うじて小久保を打ち取った木谷を満面の笑みで出迎えた。

 勝負どころは分かっていた。3点リードの6回、先頭打者に四球を与えたことから、無死一、三塁のピンチを招いた。2死後、松中に中前適時打こそ許したが最少失点で切り抜けた。「緊張したのは初回くらい。あとは自分の投球ができたと思います」。今季重ねた14勝の中で勝つためのツボと自信を取り戻していた。

 傷ついたプライドは、結果で癒やすしかなかった。五輪代表の落選が決まった7月17日。「怒ってもいないし、落ち込んでもいませんよ」と、努めておどけてみせた。それでも横浜村田の体調不良で代替選手に名が挙がると「(入れ替えは)ないでしょう。もうその話はなしにしましょう」と口を閉ざした。8日に行われた開会式も、テレビで見ることすらしなかった。心に封じ込めた代表への思い。チームで勝利を重ねることが、何よりの薬だった。

 7回4安打1失点も自責点0で、防御率は2・04でダルビッシュを抜きリーグトップ。最多勝、勝率と合わせて投手3冠となった。白星も自己最多タイの15勝に並んだ。それでもエースにとっては通過点にすぎない。野村監督も「100球過ぎるとボチボチ(交代と)言ってくるわ。今日もそう。ガラス玉だな」と手厳しかった。岩隈も「15勝?

 とりあえず並べてよかったです。早く越せるようにしたいです」と現状に甘んじることはなかった。残りの登板機会を全勝すれば20勝の大台に乗る。代表には選出されなかった。北京に活躍が伝われば、それでいい。【小松正明】