<楽天2-8西武>◇14日◇Kスタ宮城

 打球の行方を見るまでもなかった。十分な感触を両手に残し、西武中村剛也内野手(24)は淡々と一塁ベースへと駆けだした。「(前打者の)後藤さんがつないでくれたので、ぶち込んじゃいました。打った瞬間、完ぺきでした」。4回、楽天青山の直球を左翼席中段まで運んだ。パワー、飛距離ともに申し分のない先制2ラン。何度打っても、アーチの味は格別だった。

 30号の大台に、リーグ一番乗りで到達した。西武では91年秋山以来となる快挙。3年前の自己記録22発を大幅に更新し「今年はシーズン前から30本以上は打ちたいと思っていました。『30本』って見た目がいいですよね」と笑い飛ばした。球宴明けの7試合で6発。渡辺監督から「ホームラン王を狙え」とタイトル奪取指令を受けてから、目標ができて量産態勢に入った。

 夏場の暑さ対策には「よく寝て、よく食べること」と体重102キロのキープを目安にする。好物の1つがタコ。野球選手はヒットが出ないことを「タコ」と呼ぶことから、シーズン中はタコを食べない人が多い。以前、同僚と食事に出かけた中村は「そんなの関係ねえ」とタコを食べまくり、翌日のゲームで本塁打を打って見せたという。何事も気にしすぎない性格が、好調を呼び込んでいる。

 「三振も多いけど、6番打者で30発打ってくれれば十分」と渡辺監督。重圧の少ない打順で起用し続け、一時は伸び悩んだ24歳が開花しようとしている。細川がソロ2発、ボカチカが2ランで続き、1試合4発以上は今季10度目。15日にも優勝マジック32が点灯する。【柴田猛夫】