<阪神1-6巨人>◇31日◇甲子園

 巨人が落とせない1戦で、踏みとどまった。8月31日、7ゲーム差で迎えた阪神戦(甲子園)。1-1の8回、虎が誇る「JFK」の一角ウィリアムスから一挙4点を奪取。1死満塁から阿部慎之助捕手(29)が押し出し四球を選び勝ち越し。2死後、代打大道典嘉外野手(38)が走者一掃の適時二塁打を放ち、9回にも1点を加えて6-1で快勝。中4日の先発内海哲也投手(26)が6回1失点で抑え、終盤は3投手の継投でピシャリ。これで6ゲーム差。5・5差だった4月25日以来の接近となった。

 阪神が誇るゲーム終盤の牙城を、巨人打線が巧みに崩していった。1-1の同点で迎えた8回。岡田監督は当然、ウィリアムスをマウンドに送った。昨季11試合に登板し防御率0・64。「JFK」3人の中で、最も苦とする相手だった。

 3番小笠原からの攻撃。ファウル3球の後、直球を中前に落とした。小笠原は年間数本しかバットを折らない。珍しく芯を外されたが食らいついた。。二塁まで砕け飛んだ木片が、しぶとい勝ち越し劇ののろしだった。

 ラミレスが初球を右前に運び一、二塁とし、打席に前日猛打賞の李が入った。カウント2-3となり、ベンチは動いた。塁上の走者を走らせ、李に進塁打を狙わせる「オートマチック」のサイン。李は外角低め直球を強引に引っ張り二ゴロとし、1死二、三塁。「最低限です」と謙虚につなぎ役を演じきり、満を持して代打に谷が送られた。

 だがベテランも黒子に徹した。絶好機にもバットを1度しか振らず、四球を選びつないだ。阿部も同じ。1度カットしただけで、勝ち越しの押し出し四球を選んだ。4回には押し出しを選ばれ、同点に追い付かれている。「押し出し返しです」と満足そうだった。

 真綿で締め付けるように追い詰めた。あとは代打大道が決めるだけだった。初球を逃さず、右中間を突破する走者一掃の3点適時二塁打。「阿部の四球で気が楽になった」とこぶしを握ると、甲子園のファンはぞろぞろ家路を急いだ。

 天敵に31球も投じさせ、完膚なきまでに沈めた。原監督は「2-3からよくスンヨプがゴロを打ってくれた。谷、阿部もしっかり選んでくれた。あの辺が勝負の中で大きい」と胸を張った。甲子園で勝ち越し、6ゲーム差。阪神追撃への目安とする5ゲーム差まであと1つだ。「まだ見えない。見えなきゃ、話にならない」と締めたが、この日のように戦況を冷静に読み、全員で追い詰めていけば…。昨年の覇者は音を上げる気などない。【宮下敬至】