近鉄に惜敗したダイエー王監督らを乗せた移動のバスが、またしても過激なファンに取り囲まれ、15分の足止めを食った。この日、日生球場では7日に起きた「バス包囲騒動」の再発を警戒し、通常の警備員36人に加え私服警官8人を動員。さらにバスの出発口を左翼横からバックスクリーン裏に移し、その周辺の警備員も前回より10人多い30人に増やした。選手のバス乗車も試合終了30分後に遅らせるなど、さまざまな対策が講じられたが、効果はなかった。

 人波からは「辞めろサダハル」のシュプレヒコール。バスには心ないファンから野球の応援とは無関係な生卵が投げ付けられた。

 試合終了と同時に球場に険悪なムードが漂った。一人の男が三塁側フェンスを乗り越えると、ベンチ前に待機していたガードマンが取り押さえた。直後に「辞めろサダハル」コールとともに、グラウンドのレフト定位置付近には発煙筒が投げ込まれ、白煙が立ち込めた。この日は計4人のファンが警備員に取り押さえられた。

 「選手も何をやらなきゃいけないかは分かっていた。あと一押し足りなかったな」と振り返る王監督は、バ声に「勝てば文句は言われないんだ。このファンも勝てば拍手で迎えてくれたはず」と耐えた。王ダイエーは不調というトンネルからの脱出と、ファンへの対応という難問を抱え込んだ。(1996年5月10日付日刊スポーツ)