タイトルよりクライマックスシリーズ(CS)!

 中日川上憲伸投手(33)がヤクルト戦登板を回避し、CSに照準を定めた。五輪派遣選手の特例によりあと9回2/3で規定投球回に達し、7失点しても広島ルイスをかわし初の防御率タイトルを手にしていたが、休養を重視。残り1試合での到達は極めて厳しく、事実上タイトルを断念した。主力を休ませたチームは今季ワースト17失点で大敗したが、着々とコンディションを整えた。

 エースの姿はベンチの中にもなかった。ベンチ入り25人の中に、川上の名前はなかった。試合前練習では先発小笠原をカムフラージュするためダミー役もこなした。試合終了を見届けることなく球場を離れた。

 念願のタイトルよりも2年連続日本一を優先した。川上は自身初の最優秀防御率を射程にとらえていた。北京五輪出場の特例によって、規定投球回クリアまであと9回2/3だった。現在は防御率2・34で“隠れ1位”。この日のヤクルト戦と12日阪神戦の2試合で規定回に達し、自責点7までに抑えれば獲得だった。2月の沖縄キャンプで「五輪でチームを抜けた場合、最多勝は難しい」と目標を最優秀防御率に設定していた。

 しかし「防御率」を狙えば、残り2試合ともに登板が必要だった。登板間隔はこの日のヤクルト戦で投げていれば中5日、そこから次の12日阪神戦まで中4日。そして18日のCS初戦は再び中5日。川上は1日横浜戦で68日ぶりに先発復帰したばかり。タイトルのために登板を重ねて疲労が蓄積されれば、CSでチームに迷惑をかけかねない。今オフにFA権を行使する可能性が高まったが、その前にポストシーズンに全力を注ぐ覚悟が“タイトル放棄”につながった形だ。

 大敗した落合監督は「神戸(阪神戦)は違うよ。主力でいく。休ませて、調整させて、動けるようにしないといけない。どうあっても主力でいかないといけない」と話し、CSをにらんで12日阪神戦はベストに近い布陣を敷く考え。調整登板の可能性がある川上も、万全の準備をしてCSに臨む。【益田一弘】