<阪神4-1中日>◇12日◇スカイマーク

 「岡田コール」に包まれた。阪神は中日との今季最終戦(スカイマーク)に4-1と快勝し、82勝59敗3分けで全日程を終えた。岡田彰布監督(50)試合前に南信男球団社長(53)と会談。慰留を受けたが翻意せず事実上、辞任が決まった。試合後は、辞任を惜しむファンの声がわき上がった。岡田監督は18日からのクライマックスシリーズ、進出した場合の日本シリーズも指揮を執る。辞任後はしばらく野球界から距離を置く考えで、評論家活動など行わない意向だ。

 一塁ベンチから岡田監督が姿を現すと、拍手と歓声が自然発生した。「やめないで~」や「オカダ、オカダ」のコールが飛び交う。シーズン最終戦のセレモニーでナインとともにグラウンドに整列し、脱帽して2度お辞儀をした。今季限りの辞任を決意した指揮官が出来る、ファンに向けた最後のあいさつの場だった。

 「コールって、なあ。1つの区切りの試合やからな、144試合の。でも、まだ先があるから」

 珍しく照れた。だが、感傷に浸ることはなかった。いずれ決別するユニホームだが18日からのクライマックスシリーズ、進出すれば日本シリーズでも着続ける。この日は、その前哨戦ともいえる中日戦。全力でタクトを振るい、勝利で締めくくった。

 試合前には監督室で南球団社長と会談した。約30分の話し合いで、優勝を逃した責任をとっての辞任を改めて申し入れた。慰留を受けたが、今季限りの気持ちは変わらなかった。

 「これまで電話で話もしている。きょう会って話したからといって、何も変わらんよ」

 死闘の末に敗れ去った東京-横浜遠征から比べて、表情は格段に穏やかだった。中日・落合監督とのメンバー表交換でも笑顔で握手を交わした。自らの去就をはっきりさせたことで、落ち着きを取り戻した。

 その先は-。80年にドラフト1位で阪神に入団してからコーチ、1、2軍の監督を経てユニホームを着続けている。辞任後は、野球界から距離を置いて自由な生活を謳歌する考えだ。

 「海外とかでのんびりしたい。監督を辞めて一番やってみたいことと言われれば、そうやな、札幌の雪祭りを見てみたいかな。今までテレビでしか見たことない。家族は見に行ったことあるんやけどな」

 2月といえば温暖なキャンプ地でシーズンに向けた準備をする時期。寒風吹く札幌の大通りにライトアップされた巨大な雪像が浮かび上がる幻想的な風景は、映像で見るか話を聞くことしかできなかった。「まあ、わざわざ寒いところに行くこともないけど。好きなように過ごすわ」とゆったりした時間を過ごすイメージしか浮かばないようだ。

 評論活動などにも消極的で、キャンプ地や試合を訪れることも「ないんちゃうか」と話す。1日24時間、1年365日、野球に携わってきた生活から180度違う人生を思い描いている。【町田達彦】