他球団へ移籍可能なFA(フリーエージェント)権を行使し、米大リーグでプレーする意向を固めた巨人上原浩治投手(33)が米エージェント会社のSFX社と契約することが10日、明らかになった。同社は同じく巨人からFA移籍した松井秀喜(ヤンキース)も代理人契約した最大手。レッドソックス・オルティス、ヤンキースの守護神リベラら多数の大物選手が契約している。この日、FA有資格者が権利を行使するための手続き期間がスタート。頼もしいサポートを得て、日本のエース争奪戦がいよいよ幕を開ける。

 上原が目標である大リーグ挑戦へ素早く動いた。ここまでは「お世話になった巨人の日本一に何とか貢献したい」と試合に集中したい思いが強く、代理人契約についてのアプローチを一切絶ってきた。だが、米国時間14日(日本時間15日)には米大リーグのFA選手の交渉が解禁となる。メジャー移籍へ、初動の遅れが理由で契約が遅れることは避けたい意向で、シーズンの全日程が終了しSFX社との代理人契約を決断した。

 この日は自宅で静養したが、近日中に代理人契約のサインをする予定。18日までと期限が設定されているFA権行使に必要な書類を提出し、本格的な交渉に入る。上原は米国内で最大手のエージェント会社のメリットを重要視した。イリノイ州に本拠を置くSFX社のベースボール部門は、メジャー全30球団の主力選手と代理人契約を結び、各球団のGMら首脳とも強固なネットワークを構築している。

 レッドソックス主砲オルティス、ヤンキース守護神リベラ、エンゼルス主砲ゲレロ、カブス主軸のソリアーノ、メッツの通算214勝右腕P・マルティネスらメジャーのトップ選手が数多く契約している。契約に関するノウハウはもちろん、契約年数、金額など条件面のメジャー市場のデータの蓄積がある。客観的かつベストの選択肢を提示してもらえる点が代理人選定の決め手となった。

 同社は07年4月に日本支社を設立、日本人選手の海外移籍も積極的にサポートしている。ロッテからFAでインディアンスへ移籍した小林の交渉を担当。元巨人で上原と交友の深かった前田には入団テストの場を提供し、レンジャーズとのマイナー契約にこぎつけた実績がある。

 当面の課題だった代理人問題が解決したことで、次のステップへと進む。巨人清武球団代表はこの日、前日9日の日本シリーズ第7戦前に上原と会談したことを明かし、「10年間耐えて頑張ってくれたことに、ありがとうと言った」と、本人の意向を尊重する方針を示した。「何らかのアクションがあったらお知らせします」と話し、長年チームを支えた功労者を快く送り出す姿勢だ。

 上原は「投手として真っ向勝負が信条で、ワクワクする強打者との対戦こそが(米移籍の)最大の目的。その気持ちにブレはなかった」と、メジャーの移籍先球団については強い志向がない。各球団とはフラットな状態で交渉のテーブルにつく構えだ。交渉窓口がハッキリすることで、いよいよ代理人を通しての争奪戦がスタートする。強力なパートナーを得た上原の今後の動向が注目される。