来年3月に行われる第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のスタッフ会議が21日都内で行われ、会議後、原辰徳日本代表監督(50)が選手選考について非協力的な球団があるとして憤慨した。12月15日に暫定ロースターとなる45人を発表する予定で、前回の会議で48選手をリストアップしていたが、この日までに中日の選手は全員が辞退した。原監督は「1球団においては、誰ひとりも協力者がいなかった。やや寂しいことでした」と話した。球団は名指ししなかったが、世界一に向かって船出する“サムライ・ジャパン”が、いきなり暗礁に乗り上げてしまった。

 取り囲むテレビカメラに向かって頭を下げる原監督の姿が、逆に痛々しかった。「全球団、全世界に散らばっている野球人のほとんどが協力してくれる姿勢を感じる。この場において厚く御礼を申し上げたい。オーナーをはじめ、各球団の監督、ご迷惑をおかけしますが、ご協力よろしくお願いします」とお辞儀をした。日の丸を掲げて戦う過酷な“世界一決定戦”。それだけに日本代表監督の選考が難航した中で「全日本の監督は名誉なこと。たらい回しされるようなことではいけない」と引き受けた経緯もある。しかし、原監督の熱い心意気は、すべての球団や監督には通じていなかった。

 前回の会議で48選手をリストアップ。各球団に選考された選手の出場有無を確認し、12月15日に暫定ロースター45選手を決めるが、6人の辞退者が出た。「ほとんど協力的だけど、事情がある辞退も聞いた。やむを得ないこともあるが、1球団においては誰ひとりも協力者がいなかった。やや寂しいことでした」と率直に表明した。会議では数名の辞退者については、球団側から本人のコメントを交え、辞退理由が説明された。しかし、中日だけは「辞退」と返答しただけだった。

 会議に出席した関係者は、球団名を名指しはしなかったが、非協力的な球団が中日であることは明らかだ。第1次候補に選出されていたのは、岩瀬、森野、浅尾、高橋の4人だが、全員が辞退。北京五輪で岩瀬、川上が故障した経緯もあり、落合監督は選手の選出に「協力はするが、けが人は出さない」としていた。だが、浅尾、高橋は現在も練習しているように、辞退する主立った理由も見あたらず、落合監督のコメントも矛盾している。

 日本は前回大会で優勝しただけに、各国のマークも厳しくなる。国の威信と名誉をかけ、アメリカらの強豪国は、前大会以上に力を入れてくるのは間違いない。北京五輪で大惨敗を喫した後で、日本球界が一丸となることを目指す中で、いきなり水を差す状況になった。【小島信行】