<ソフトバンク1-1阪神>◇19日◇福岡ヤフードーム

 99%負けでしたな。今季を占う交流戦開幕のソフトバンク戦は、0-1で9回へ。ストッパーの馬原が出てきて「もうあかん」。そんな思いの虎党を救ったのが、代打林威助外野手(30)の起死回生の同点ホームラン。期待されながら、ようやく8日に1軍に昇格したホープが、左翼席に今季1号弾をたたきこみました。延長12回には、前回13日の広島戦で敗戦投手となった球児が、復活の3人斬り。これで流れがガラリと変わって、阪神快進撃といきませんかねえ。

 左手で、力強くバットを押し込んだ。ソフトバンクの守護神・馬原が投じた外角いっぱい151キロ。阪神林威助外野手(30)はボールに逆らわず、左翼席までライナーを届かせた。

 林

 外に来るかな、と狙っていた。でもまさか入るとは。最近投手がすごい良いピッチングをしていたんで、何とか塁に出ようと思っていました。0-1の9回。先頭で代打で登場し、今季1号を放った。08年8月26日の中日戦(甲子園)以来、266日ぶりの1発は起死回生の同点弾。絶体絶命の場面で試合を振り出しに戻し、もう顔はくしゃくしゃだ。「珍しい」という通り、通算24本塁打目はプロ7年目で初の左越え弾となった。

 左にも1発-。進化の裏側には左手首の復調がある。07年5月、林は一塁走者として帰塁した際に右肩を痛め、このころから左手首をテーピングするようになった。「右肩をかばって(左手首に)負担がかかってしまって。巻いた方が痛みが出にくい」。苦悩の日々を知る「負傷の象徴」。だが、左手首のテープは、今年の4月中旬にはなくなった。「外しても痛みが出なくなった」。2年越しの不安が消え、左翼席にボールをたたき込む力がよみがえった。

 WBC台湾代表に選ばれ、開幕前の3月の大半をチームと離れて過ごした。激闘を終えると、極度の不振に陥った。開幕は2軍スタート。「原因は分からなかった」。だから原点に戻り、ただがむしゃらにバットを振った。結果はついてきた。2軍打率が3割5分を超え、5月8日に1軍昇格。83キロだった体重が2キロ落ちていたことに気づいた。苦しみを乗り越えた。チームにとっても大きな1発だ。この試合まで3試合連続で1得点しか奪えず3連敗中。この日もソフトバンク杉内に要所を締められた。そんな重苦しいムードを一掃。本人は「負けと引き分けでは全然違う」と喜び、真弓監督も「あの1発で今日の試合は助かった」とたたえた。

 メンチが事実上、戦力外の状況で、右翼レギュラー争いは桜井との一騎打ち。DH制のある交流戦では出番が急増するだろう。球団は新外国人獲得の方針を固めたが、関係ない。生え抜きの30歳。本来の姿を取り戻せば、どんなライバルも怖くない。

 [2009年5月20日10時43分

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