<広島1-6横浜>◇15日◇マツダスタジアム

 固定観念を逆手に取った横浜佐伯貴弘内野手(39)の本盗だった。4回表2死二、三塁で打席には投手の寺原。カウント2-1と追い込まれていた。三塁側ベンチの田代監督代行はアイコンタクトで三塁コーチャーの水谷コーチに本盗を指示した。三塁走者の佐伯も「緊張したよ」というが、思い切って生涯初の本盗ダッシュ。1軍初マスクの会沢が変化球がワンバウンドしたのを前に落とし、あわてて拾ってタッチする前へ豪快にホームに滑り込んだ。マウンドの斉藤はショックで天を仰いだ。

 田代監督代行は「詳しくは言えないけどサイン。まあ無警戒は無警戒だよね。オレもあまり見たことないようなことができた」と振り返るが、無警戒を生む要素は計算していた。(1)三塁走者が野手最年長で3年間盗塁のない佐伯。(2)打者は投手の寺原で、すでに追い込まれていた。(3)広島捕手は初マスクの会沢。(4)広島の投手は左腕斉藤で三塁走者を背中越しにしたまま打者寺原に集中しており、リード、スタートが切りやすい。

 広島バッテリーはあと1球のストライクで三振を奪える。変化球を低めに投げれば投手の寺原に当てられる可能性は低いと思っていた。06年5月5日以来、盗塁を決めていない佐伯が動くことも考えにくい。会沢は「ノーマークにしていたこともありますし、2軍でもやられたことはなかった」と話した。

 リスクもあった。それでも田代監督代行は「そりゃそう。そういう失敗はとやかく言わないよ」という。今季初の4連勝。プラス思考が「最下位が定位置」という周囲の固定観念を打ち破っていく。【今井貴久】

 [2009年7月16日8時4分

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