<オールスターゲーム:全パ8-10全セ>◇24日◇札幌ドーム

 ライバルとの「前哨戦」に勝った。中日トニ・ブランコ内野手(28)が初めての球宴に「6番一塁」でスタメン出場。5打数2安打2打点と活躍した。試合前に行われた「ホームランダービー」では2・5ゲーム差で追う首位巨人の主砲・小笠原と決勝を戦って圧勝した。球宴明けの28日に待つ巨人3連戦(東京ドーム)へ向けて景気のいい本塁打ショーだった。

 まるで代理戦争のようだった。お祭りを盛り上げるイベント「ホームランダービー」。1回戦で日本ハム稲葉を下し、決勝に進出したブランコの相手は巨人の主砲・小笠原だった。セ・リーグ首位を争うチーム同士の戦いで負けるわけにはいかない。ブランコの表情は真剣そのものだった。

 本塁打以外はアウトで「7アウト」までに何本打てるか。先に打った小笠原が2本塁打に終わるとブランコはゆっくり打席へ向かった。3アウトまで本塁打が打てなかったが、4スイング目で左翼最上段まで飛ばすと、連続で同じ場所へ放り込んだ。7スイング目で3本目を放って勝負あり。1回戦では札幌ドームの天井を直撃する当たりを放ってファンを驚かせるなど、まさに独壇場だった。「アリガトウ。神様のおかげだ」。賞金50万円を獲得したブランコはご満悦だった。

 ゲームでも存在感を見せつけた。2回、最初の打席楽天田中の145キロ直球をはじき返した。「グシャッ」と鈍い音がしたが、打球は強烈なライナーで左前打となった。「おおっ~…」。衝撃のパワーに球場は再び驚きの声に包まれた。さらに9回2死二塁では、日本ハム武田久から左前タイムリーで10点目を奪った。「(全部)本塁打を狙っていったんだけどね。まあ最初は緊張したけど、試合の中でだんだんリラックスできた」。5打数2安打2打点。一流選手が集う舞台でもパワーは傑出していた。

 初めての球宴を控えた前夜、札幌市内のホテルで落合監督と食事をした。普段は焼き肉が大好物だが、指揮官に前半戦の活躍をねぎらわれながらカニや刺し身など北海道ならではの海の幸を楽しんだ。それでもグラウンドに立てば、いつも真剣勝負だ。試合前のフリー打撃が終わるとティー打撃をおかわり。さらに練習後に1人、室内練習場を占拠してフリー打撃を行い、本塁打競争に備えた。

 前半最後の22日広島戦、最終打席で左ひざに自打球を当てており、肉体的には万全ではなかった。それでも結果を出してしまう。逆転優勝を狙う後半戦へ、チームにとって頼もしい限りだ。【鈴木忠平】

 [2009年7月25日10時51分

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