<巨人4-2ヤクルト>◇6日◇東京ドーム

 巨人の絶好調キャプテン阿部慎之助捕手(30)が、2戦連続の特大弾でチームを勢いづけた。1点リードの6回。外角高めの直球をスイングした阿部の手には、最高の感触が残った。右翼席上段へ21号ソロをたたき込み「芯(しん)を食ったね。余計な力が入らずにスムーズにバットが出た。バットのヘッドが『スコーン』と抜けたよ」と満面に笑みを浮かべた。前日は広告看板を直撃するアーチを放った。連日の100万円ゲットはならず「欲を言えばUCカードの看板まで届いてほしかったね」と、ちょっぴり悔しがった。

 往年のスラッガーを思い起こさせる、技ありの1発だった。「門田さんみたいだったでしょ?」。パワーが衰えた40歳を越えてから本塁打を量産した名スラッガー門田博光氏の名前を挙げて喜んだ。20代のころの技術では、この日のようなアーチは打てない。「こういう打ち方もできるようになった、ということ」と、持ち前のパワーに、円熟味が加わってきたことを実感できるひと振りだった。

 開幕から右肩や腰痛などの故障に悩まされ、8月は夏風邪を長引かせてさらに調子を崩した。それでも、うだるような暑さの中での、連日の走り込みは欠かさなかった。4・5キロのダイエットに成功し、体のキレが戻った。門田氏のように、軽く振っても打球はグングン伸びたのは、どっしりした下半身と腰の回転がなせる業。「今年は豚汁(汗)をいっぱい流しましたから。やっと成果が出てきました」と笑った。

 阿部にとって、自身の1発よりもうれしいことがあった。勝ち星が伸びずに苦しんでいた内海、高橋尚での連勝。「負けていたのは投手のせいだけじゃない。自分のリードも悪かった。何とか2人に勝たせてあげたい、と思っていたから。ヒサさん(高橋尚)は今日が息子の誕生日だって言ってたし」。9月は4勝負けなし。優勝マジックを快調に減らして「16」となった。明るく、仲間思いのキャプテンが先頭に立って、3連覇へ突き進む。【広瀬雷太】

 [2009年9月7日8時42分

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