<日本ハム3-1ロッテ>◇13日◇札幌ドーム

 エースの復活劇が、ピンチを救った。日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が復帰戦を白星で飾り、チームの連敗を6でストップした。コンディション不良で一時離脱し、23日ぶりの先発になったが、8回6安打1失点の好投でハーラートップタイの15勝目を挙げた。近鉄野茂以来、16年ぶりとなる、3年連続15勝以上をマーク。優勝マジックを18へと減らす記録的快投で、2年ぶりのパ・リーグ制覇へ再加速させた。

 ダルビッシュが放った魂の104球が、暗闇から抜ける道しるべになった。最速146キロの速球、100キロ前後のカーブ中心の組み立て。中心になるスライダーは「3球くらいしかなかった」と封印した。球速以上にキレ、伸びのある直球で押し込み、空振りを誘い、カーブでカウントを稼いだ。勝負どころではフォーク、チェンジアップを使った。「それでもいけるという自信があった」との根拠を、復活劇で明らかにした。

 中22日のマウンド。7月の球宴での打球直撃による右肩内出血が離脱の一番の要因だった。「ちょっと変化球を投げるのは負担がかかる」と球種を制限したため、スタイルを変えた。「いい休養にするため、確実に勝てる状態にして戻ってこようと思っていたけれど思ったよりも早まった。でも気持ちが強いんで、それを含めて(状態は)100%」。チーム事情もあり、前倒しされた復帰だが、心技体の総合力で最高のパフォーマンスを見せた。

 プロ5年目で、早くも3年連続15勝以上、野茂らと同じ高みに到達した。この日、その土台の適応力、特に内面の進化が凝縮されていた。すでに2度のリーグ制覇に日本一も達成。北京五輪、WBCと逃げ場のない数々の激戦の中で、右腕を振り続けてきた。休養前は右肩に残った内出血の影響で、試合中に右肩後部付近に強い張りを覚えるようになった。「あの状態じゃ無理ッス。フォークは伸びていたし、まっすぐも(バットの)芯にいく」。不調の要因と向き合い、監督らと話し合った末に決断した休養だった。

 いつものセットポジションではなく、「見た目。自分にも新鮮さがある」と、3年ぶりにノーワインドアップで投げた。羽を休める大切さを知り、投球内容の幅も広がった。「ちょっと責任感が強すぎて、頑張りすぎていた」と自制心を働かせ、最高の再発進へつなげた。梨田監督が「本当によく放ってくれた」と感嘆するほど、エースらしい働き。「自分たちのできることをしっかりやれば、マジックはゼロになる」と、歓喜の最終章を開いた。【高山通史】

 [2009年9月14日8時34分

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