<セCS第1ステージ:中日2-3ヤクルト>◇第1戦◇17日◇ナゴヤドーム

 2009シーズンはまだ終わらせない-。落合中日はクライマックスシリーズ(CS)第1ステージ初戦(ナゴヤドーム)でヤクルトに逆転負け。07年のCS導入以来、初めて初戦を落としてがけっぷちに追い込まれた。ただ、左肋骨(ろっこつ)骨折から復活した藤井淳志外野手(28)が復帰即スタメンで猛打賞を記録する大暴れ。明るい兆しはあった。あきらめるわけにはいかない。18日の第2戦、逆王手を狙う。

 最後は井端の打球が二塁へ転がった。ベンチの選手たちは試合終了を見届けるとすぐに席を立ち、次々とロッカーへ引き上げていった。痛い1敗には違いない。だが、後ろを振り返っている暇はない。CSは前しか見てはいけない戦いなのだ。そして、惜敗の中に明るい兆しは確かにあった。

 「7番ライト、藤井」-。試合前、スタメンが発表されると大歓声を背中に受けてグラウンドに飛び出した。9月6日横浜戦(新潟)で左肋骨(ろっこつ)を骨折して負傷退場して以来、41日ぶりの1軍戦だった。そして、いきなり打線の火付け役となったのだ。

 3回の第1打席、ヤクルト先発石川の変化球を右翼線へ運ぶと、快足を飛ばして二塁へ滑り込んだ。5回には左翼線を破る二塁打で2点目のホームを踏んだ。そして、土壇場の9回には守護神林昌勇から先頭打者として執念の内野安打を転がして、見せ場をつくった。復帰初戦の大一番で3安打猛打賞をやってのけた。

 「1番大事なところで凡打しているので、次は何とかそういうところで打てるように頑張ります」。

 敗戦の後、藤井は6回2死一、三塁で凡退したことを悔やんだ。3回には三塁走者として、微妙な打球で本塁に突入して憤死した場面もあった。シーズン中なら猛省する点もあっただろう。だが、今は超短期決戦のまっただ中。プラス材料にだけ目を向ければいい。

 肋骨骨折と判明した時、周囲は今季絶望も覚悟したが、藤井はあきらめなかった。わずか2週間で練習に復帰すると、宮崎での2軍戦で猛アピールし、ぎりぎりCSのメンバーに滑り込んだ。「まったく痛くないと言えばウソになります。でも骨がくっついていると医者が言った以上、僕の中では治っている。そう自分に言い聞かせています」。たまに「ズキン」とくる左わき腹の痛みは、CS出場への執念で抑えこんだ。宮崎の2軍戦では「恐怖心」をかき消すためにわざとヘッドスライディングもやってきた。

 やっと戻ってきた最高の舞台。落ち込んでなどいられない。きょう先発が予想される館山には打率3割8分5厘、そして守護神・林には10割(4打数4安打)の相性を誇る。「とにかく勝ちにつながるプレーをしたい。まだ試合があるわけですから」。藤井の言葉が選手たちの気持ちを代弁していた。【鈴木忠平】

 [2009年10月18日12時12分

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