ソフトバンク王貞治球団会長(69)が25日、マリナーズを退団した城島健司捕手(33)に「フルマスク手形」を約束した。獲得レースへの参戦表明と料亭での直接会談から一夜明けたこの日、個人的な見解としながらも、出場機会に飢える愛弟子について「考えなくていい。彼を上回る選手はいない」と144試合正捕手を“保証”。正式交渉の日程は調整中だが、交渉で先行する阪神逆転に向けたラブコールは収まらない。

 電光石火の料亭会談から日が替わっても熱っぽい口調はそのままだ。この日午前に福岡ヤフードームを訪れると、王会長は「こっち(日本)にきてプレーしたいっていうからね」と3時間に及んだ直接出馬を振り返った。「本当はおれは渉外の担当じゃないんだけど」と職務外を強調しながら、この日も出場機会を求める城島への深い思いをにじませた。

 王会長

 日本では出場機会のことを考えることはないよ。彼を上回る選手はいないし、普通にやればいいんだよ。

 マリナーズ退団後の会見で、城島は入団交渉の決め手に「今、飢えている自分を一番暴れさせてもらえる球団」と断言した。「プレーイングタイムを最大の条件というか、それをもとに交渉していくつもり」とも言った。マリナーズでの今季はけがから2度の故障者リスト入りを味わい、若手に出場機会を奪われ、71試合の出場にとどまった。城島の注視する最大条件に対して、王会長は私見ながら144試合フルマスクを当然のように“保証”した。もちろん入団となれば決定権は秋山監督にあるが、交渉時の熱意を大切にする相手にはこの姿勢は誠意として伝わる。

 また王会長は、メジャーで4年間プレーした城島が古巣と対面したことに意義があると主張。「離れれば離れるほど、関心が高くなるんじゃないかな」。入団時から恩師と愛弟子の関係。王会長が「2人じゃないと分からないところがある」と表現した2者会談の感触は当人にしか分からないが、心を揺さぶった感触は手のひらに残っていた。

 獲得レースで先行する阪神は23日に初交渉を行い、条件と背番号2を提示した。一方、入団交渉という観点ではソフトバンクは参戦を表明しただけ。この日の王会長は、福岡市内のホテルで開かれた「天皇陛下御即位二十周年奉祝福岡県民の集い」で地元政財界へのあいさつに追われるなど、球団と城島サイドと間に大きな動きはなかった。

 金額提示を含めた正式交渉については、場所を国内で行うか米国で行うのか、交渉スタイルも城島本人を交えてのものにするかなど、数日中に城島側へ打診する予定だ。王会長の今回の「出馬」は慣らし運転。いよいよここから巻き返しへアクセルを踏み込む。【押谷謙爾】

 [2009年10月26日11時43分

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