松井さん、また一緒にプレーしましょう!

 今季海外移籍も可能なFA権を取得した巨人高橋尚成投手(34)が17日、夢の大リーグ挑戦を表明した。東京・大手町の球団事務所で球団側に権利を行使する旨を伝えて、FA手続きを済ませた。移籍先は先発で投げられる球団との交渉を優先する考えで、入団3年目まで同僚でヤンキースからFA宣言した松井と同じチームでプレーすることも熱望した。

 高橋尚は晴れやかな笑顔で会見場に現れた。「FA権を行使してアメリカのメジャーリーグに挑戦することを決意しました。やっぱり自分の夢を実現させたい。(同い年のオリオールズ)上原の存在もすごく大きかった。今はスッキリとした気持ちでいます。もう1回、新人に戻ったつもりでチャレンジしたいという気持ちになった」。愛着ある巨人と決別するつらさには、もう踏ん切りをつけた。そんな表情だった。

 迷いに迷った末の決断だった。日本シリーズ終了後、清武球団代表とは電話交渉も含めて5度も話し合った。決断できない苦しみから、涙も流した。「決断したのは3日ぐらい前。うちの嫁が『チャレンジしてみたら』と自分の背中を押してくれた。ジャイアンツに残るのが最善の選択だったと思うけど、自分のわがままを認めてくれた球団に感謝したい」。夢だった大リーグでプレーする決意を固め、前日の優勝祝賀会の席で原監督に報告した。

 希望の球団は「自分を必要としてくれるところ。自分が結果を出せるのは先発と思っている」と、先発として興味を示す球団と優先して交渉する考えを明かした。大リーグでも貴重な左投手。日本の野球で培った制球力と、切れ味鋭いシンカーはメジャーでも通用する自信はある。「自信がなかったらこういう選択はしない。来年35歳になるけど、まだまだ体は動くと思っている」と、言葉に力を込めた。

 入団から3年間一緒にプレーしたヤンキース松井と同じ舞台に立てることも楽しみにしている。堅苦しい先輩後輩の付き合いではなく、冗談を言い合える間柄だった。ヤ軍が来日した04年には親善試合で対戦。バックスクリーンへ特大弾を浴び、その恐ろしさを身をもって体験した1人でもある。敵としてではなく、味方として再会したいという。「やっぱり松井さんには強い思いがある。一緒にプレーできたら一番幸せ」。ともに来季の所属先は白紙の状態だが、再び同じユニホームを着られることを夢見ている。

 近く代理人と契約し、本格的な移籍先探しを始める。家族は日本に残して単身で海を渡る予定。「不安だらけです」という言葉に偽りはない。それでも、会見中の高橋尚の口からは常に白い歯がこぼれた。「英会話?

 多少はね。でもあとは“アイ・ドン・ノー”です」。持ち前の明るさとプラス思考で、夢への1歩を踏み出した。【広瀬雷太】

 [2009年11月18日8時4分

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