阪神は3日、矢野輝弘捕手(40)が来季から登録名を燿大(あきひろ)に変更することを発表した。矢野は、開幕からけがに泣いた苦闘のシーズンから心機一転して、プロ20年目の勝負をかけることになる。来季は前マリナーズ城島の新加入もあって、試合出場の機会が大きく減ることも予想される。右足首骨折のけが明けで厳しい船出になる節目の年を前にして「改名」で腹をくくって挑む。

 悲壮な決意が、2文字から漂った。矢野が、来季から登録名を変更することが発表された。「輝弘」から「燿大」へ。よみの「あきひろ」は同じだが、名前を一気に2文字とも変える。

 矢野

 今シーズンがあまり良くなかったのもあり、来シーズンに気分一新して臨むためにも登録名を変更することにしました

 広報を通じて発表したコメントに覚悟がにじんだ。

 今季の矢野は、右ひじ手術から出遅れて開幕から3カ月半を棒に振った。しかも10月3日ヤクルト戦で本塁突入の際に右足首を骨折。クライマックスシリーズ争いの大詰めで戦線を離脱して、オフもリハビリスタートになった。狩野の台頭を許し、出場試合数も98年の阪神加入後ワーストとなる30試合にとどまった。

 11月には来季契約の下交渉で減額制限(40%)を上回る50%、推定で約1億円の大減俸を提示された。しかも来季は前マリナーズの城島が新加入する。真弓監督が「優勝戦力」と位置づける捕手加入で、出場機会が減ることは避けられない状況。オリックス岡田監督が矢野に興味を示したことを発端に、阪神球団と岡田監督の騒動にも発展していた。

 ただ逆風にもめげず、矢野は腹をくくっている。プロとして試合に出るために最善の準備を続けていく。11月24日には「城島がFAで加入して、いろんなことが厳しくなるのはあっても、自分がやることは変わらない。年俸が下がろうが、年俸が1億、2億、3億だろうが、やることは変わらない」と決意を口にしている。

 野球界での登録名変更は、若手選手が飛躍のきっかけに行うことが多い。プロ20年目を迎える一流選手が慣れ親しんだ名前を変えることは一般的ではない。異例の「改名」が、40歳の悲壮な覚悟を物語っている。

 [2009年12月4日11時46分

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