西武ドラフト1位ルーキー菊池雄星投手(18=花巻東)が、東北福祉大(仙台市)の総合福祉学部通信教育部に入学願書を提出していることが19日、明らかになった。将来教師になりたい夢もかなえるため、「福祉」という教科で高校教員の免許取得を目指す。合格すれば、今年4月からリポート提出などの通信教育を開始。デビュー前の新人選手が教職にも挑戦するのは異例だ。またこの日、選手登録名が「雄星」に正式決定した。

 勉強家としても注目される菊池は、やはり並の18歳ではなかった。幼少からの夢だったプロ入りを実現させると同時に、早くもセカンドキャリアの人生設計にも動きだした。大学野球界の名門で知られる東北福祉大に、入学の願書を提出していたことが判明。書類選考に合格すれば、この4月から大学生とプロ野球選手の“二足のわらじ”をはくことになった。

 育ててくれた花巻東野球部の佐々木洋監督ら指導者に恵まれ、恩師の影響も受けて「将来的に教員をやってみたい」という夢を持っている。プロ野球を引退した選手が、高校野球の指導者を目指して転身を目指すケースは少なくないが、まだデビュー前のルーキーが、野球をしながら勉強するとなれば異例中の異例。それを行動に移してしまうスケールの大きさは、常識の範囲内に収まりきらない。

 将来的には「先生」と呼ばれる日を夢見て、今回申し込んだのは、高校の教員免許を取得できる同大の通信教育部。高齢化社会でニーズが増えている「福祉」という専門教科だ。対象は社会人や主婦が多く、働きながら、家事をしながらでも、リポート提出を中心に必要な単位を取得できるシステム。カリキュラムには、老人福祉施設などへの2週間の教育実習も含まれている。免許に必要な124単位を最短4年間で取得できれば、卒業できる計算だ。

 通信教育の場合、マイペースでスケジュールを組める。個人的な都合も考慮して、同大では10年間の在籍が認められている。菊池に近い関係者は「4年から8年かけて卒業できれば」と温かく見守るという。学業の方も成績は優秀だ。花巻東の流石裕之野球部部長は「テストの平均は80点以上、41人いるコースでも5位には入るトップクラスの頭脳の持ち主です」と話した。趣味の読書で培った集中力はマウンド同様、机に向かっても発揮されている。

 この日は、新人合同自主トレ3度目のブルペン投球を行った。室内で捕手を立たせて31球。木製バットで初めてのティー打撃にも挑戦し「木のバットは使ったことがないので、手のシビレとか怖いですね。でも投球にもつながるし、野手の気持ちになってつらさ、大変さも勉強になります」と真剣なまなざしだった。何事も「勉強」が口癖で、向上心や探究心が強い。

 野球と勉強の両立を心配する声も出てきそうだが、移動やオフなどの空き時間を効率的に利用すれば、勉強時間を確保できる。球団も新たなチャレンジをサポートする意向だという。最速155キロだけにとどまらない魅力あふれる18歳。かつてメジャーにもあこがれを抱いたように、思い描く夢は自由に、限りなく広がっている。

 [2010年1月20日8時9分

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