日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が「イルカ・セラピー」を受講し、高ぶる気持ちをクールダウンした。オフを利用して5日、イルカの飼育、調教で有名な沖縄・本部町の「もとぶ元気村」を訪問し、1日調教師を務めた。イルカが大の苦手で、弱点は克服できずに不完全燃焼。「(目の前で)速く動かれたりすると、胸が苦しくなる」との恐怖体験で心を静め、6日からの第2クールへ備えた。

 いつもの威風堂々の姿は、鳴りを潜めた。ダルビッシュが、愛らしいバンドウイルカが接近すると時折、「怖っ」と奇声を上げた。東北高の1年後輩、ドラフト3位加藤政義内野手(22=九州国際大)との楽しいひとときになるはずだったが、恐怖体験におののいた。積極的に身ぶり手ぶりで合図を出し、イルカをジャンプさせるなどリーダーシップを発揮したのは、加藤政。先輩らしさを出せず「マサヨシに助けられた」と感謝の嵐だった。

 内心ヒヤヒヤで臨んだ“課外メニュー”を終え、悲痛な本音を明かした。「動く魚が苦手。(目の前で)速く泳がれたりすると、胸が苦しくなる。恐怖症みたいな…」。強打者に強気で向かう姿からは、想像できない、かわいらしい苦悩を明らかにした。イルカと接触したシーンを回想し「ちょっとだけ触った。ヌルッというか、言い表せない感じ」と顔をゆがめた。水族館へ行った経験はあり、カナヅチではないが、生きている魚と直接触れ合う“苦行”を、オフ返上で敢行した。

 4日間の第2クールは、ペースダウンが1つの狙い。すでにキャンプで2度のブルペン入りなど順調すぎる調整ペースを抑えながら、より実戦を想定した感覚を養っていく。まずはドキドキのショック療法でひと息入れ、高揚しそうな気持ちを抑える準備は整えた。打者とイルカ、どっちが怖いかについては「それについてはコメントしません」と明言を避けた。イルカとの「初実戦」を終えた今季、もう怖いものはなくなった。【高山通史】

 [2010年2月6日11時10分

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