西武のドラフト1位ルーキー菊池雄星投手(18=花巻東)が11日、原点回帰を決断した。西武第2球場のブルペンで176球を投げ、テークバックを大きくとった花巻東高時代のフォームに戻して好感触をつかんだ。12日のフリー打撃に登板し、内容が良ければ、17日の教育リーグ・ヤクルト戦(西武第2)で登板する。この日、対談したシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん(37)から激励を受け、対外試合2度目のチャンスを自力でつかみとる。

 ずっと悩み続けてきたことに、雄星が結論を下した。「工藤さんとかから、フォームは高校時代に戻す感覚でやれと言われた。そこをベースに、どうしたらプロで勝てるかを考えてプラスで微調整します」。日米20球団が面談に訪れるほど注目された「花巻東・菊池雄星」の姿を取り戻す-。悩める18歳が導き出した答えだった。

 この日、テーマを持ってブルペンに入った。意識したのはテークバックを大きくすること。「1回左腕を下ろして、ひじから上げていく感覚です」と説明した。工藤とのキャッチボールからこれを意識した。気づけばブルペンでの球数はプロ入り後最多となる176球に達していた。

 前日10日、小野2軍投手コーチから9日の教育リーグ巨人戦と昨春センバツのDVDを比較させられた。まったく違う“2人の雄星”のテークバックの変化を指摘された。左手を左ひざの横まで降ろしていた昨春センバツに比べ、左手首の位置が高くなり、ひじが縮こまっていた。小野コーチは「ずれている部分があったから(高校時代に)まずは戻しなさいと。もう1度、花巻東の菊池雄星をつくっていく」と方針を語った。

 1月の新人合同自主トレから、追い続けた理想のフォーム。質問すれば他のどんな話題よりも流ちょうに答えたが、追い求めるあまり悩みに変わった。居残りでネットスローやキャッチボールをしてフォームを確認。渡辺監督、潮崎投手コーチ、工藤、捕手らさまざまな人の意見に耳を傾けた。それでも固まらなかった。周囲からは高校時代に戻すことも提案されたが、自分で考えて試行錯誤を続けた自負もあった。

 しかし、ここにきてなぜ自分がここまで騒がれる投手になれたか、改めて考えた。最速155キロを生んだ高校時代のフォームが、その理由だった。効果はてきめん。力を抑え気味でも、投球を見た小野コーチが「光というか、先が見えた。3、4球さすがと思わせるボールがあって、投げさせたくなった」と、12日のフリー打撃登板を即決した。「今後のあいつの姿勢次第」と前置きはしたが、17日の教育リーグヤクルト戦で先発する可能性も出てきた。雄星も「体は覚えてる。しっくりきました」と手応えは感じた。悩んだ末に返ってきた原点。遠回りでなかったことを、結果で示してみせる。【亀山泰宏】

 [2010年3月12日8時13分

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