<広島8-7中日>◇17日◇マツダスタジアム

 建さんが「サヨナラ男」だ!

 広島が本拠地マツダスタジアムでの中日戦で、最大6点差を逆転する劇勝を収めた。08年7月以来、2年ぶりとなる2試合連続サヨナラ勝利を演出したのは、9回に登板した高橋建投手(41)だ。1イニングを3者凡退に抑え、直後、打線に火をつけた。誕生日だった前日16日の同カードに続いて2試合連続勝利。チームトップの今季3勝は、すべてサヨナラ勝ちによるものだ。ツキのある左腕がチームの連勝をもたらした。

 広瀬の強烈なゴロが中前にはずむと、球場のアルバイトが猛スピードで駆けだした。お目当てはウイニングボール。見逃すまいと必死に追い、サヨナラ勝利の記念球を確保した。白球は高橋の手もとへ。ベテランも「今日、初めて手に入りました」と笑顔を見せた。

 この日で早くも3勝目をマーク。そのすべてサヨナラ勝ちを呼び込んでおり、過去2勝はドタバタ劇にまぎれて、ウイニングボールの行方が分からなくなっていたのだ。メジャーから古巣復帰後、ようやく受け取った記念球。建さんが投げれば勝つ-。カープに生まれた新たなジンクスは高橋自身の快投がもたらした。

 躍動感のあるマウンドさばきだった。同点に追いついた直後の9回表に登板。強竜打線のクリーンアップと向き合っても、ひるまない。「打者を見ずにキャッチャーミットに必死に投げるだけ」。森野を速球で左飛に片付けると、ブランコには緩急で勝負。カーブで空を切らせた。「(捕手の)石原君が打者をしっかり観察してくれている。カーブで三振取れるとは。想像しない球で空振りを取れている」。3者凡退に料理し、リズム良く9回裏の攻撃に転じた。

 広島に復帰し、家族の温かみも奮起するモチベーションになっている。バースデー白星を挙げた前日11日の夜。広島市内の自宅に帰るとケーキが用意されていた。陽子夫人と2人の娘からは携帯電話ストラップとネクタイもプレゼントされた。「(3勝すべてサヨナラ勝ちで舞い込み)ビックリだけど、いくら勝ってもうれしい。応援してくれる人が喜んでくれる」。この日は熱投で応えてみせた。

 今季は9試合に登板して無傷の防御率0・00だ。お立ち台では「僕が投げたら打線が打ってくれると信じていました」と声を張り上げた。幸運な「サヨナラ男」が必勝リレーに控えていれば、最高の縁起かつぎになる。チームも中日に連勝。どこまでもエネルギッシュな41歳が必ずやチームを上位に押し上げる。【酒井俊作】

 [2010年4月18日11時39分

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