<阪神3-2楽天>◇15日◇甲子園

 ハラハラドキドキの交流戦初勝利だ。もぎとったのは阪神の守護神藤川球児投手(29)。8回裏、2死二塁のピンチを断ち9回表、ブラゼルの13号ソロでリードは2点差に広がった。セーフティーリードに見えた2イニング目。1点を失い、なお2死二、三塁。内村を際どい内野ゴロに打ち取り逃げ切った。開幕からの連続試合無失点は16で止まったが、勝てばいい。ビックリした分、試合後は笑顔、笑顔だ。

 最終回、ブラゼルが一塁ベース上で派手に転がった。判定はアウト。その光景を見て藤川は両ひざに手をついた。セリフを当てはめるなら「ああ。よかった~」。脱力状態でその体勢からしばらく動けない。城島、そして鳥谷らが先にマウンドに集まっていた。極度の緊張感から解放された藤川はやっと笑顔を見せた。

 「飛んだところがアレだったからね。でも勝ててよかった」。“劇場”の主役は苦笑いだ。1点差。2死二、三塁。三遊間への内村のゆるい打球を鳥谷がさばき一塁へ。俊足内村か、ボールが先か…。しかも送球はワンバウンド。場内に悲鳴が上がった。ブラゼルはうまくすくい上げたが、その巨体が転倒したためジャッジも一瞬遅れた。好プレーの鳥谷も「とにかくブラゼルに感謝です」。心臓バクバクの幕切れだった。

 「まさか今日止まるとは思わなかった」と本人も予想外の展開だ。8回、連続無失点記録が「16」で止まった。投げ込んだ直球17球のうち150キロ超が実に15球。火を吹くような剛速球で楽天の打者陣をグイグイ押し込んだが結果は思うようにならなかった。

 それでもポリシーは守った。「抑えは点を取られても負けなければいい」と常々言う。リードを守った。ともかく勝った。06年に球団新記録の47回 2/3 が止まったときも「勝ててよかった」。記録は止まったが今度も役目をまっとうした。

 重みのあるリードだっただけに余計うれしい。岩隈から野手陣が必死に点をもぎ取った。それをフォッサムからの継投で守ってきた。2-1の8回2死二塁。西村からバトンを受けた藤川は草野を右飛にしとめてピンチ脱出。不動の守護神らしい貫録だった。その裏、ブラゼルのソロアーチで2点差になった。勝負あり--と誰もが思った矢先、再びピンチが待っていた。

 9回は先頭山崎に中前打を浴びたが簡単に2死を奪い、あと1人。そこから憲史に四球を与えると聖沢に二塁打を浴びて1失点した。実は8回終了時にはフォッサムとともにお立ち台に「指名」されていたが、9回のドタバタ劇で平野に変更。それほどの「アクシデント」だった。

 交流戦2連敗スタート。こうも初勝利は遠いのかと思わせるドラマだった。負けていたら中日に抜かれ3位転落するところ。真弓監督は「最後はちょっと心配になりました。連敗スタートだったし(みんな)硬くなってるわけじゃないでしょうが」と息をついた。守護神をはじめナインが苦しんで岩隈を倒し、大きい1勝を手にした。

 [2010年5月16日10時43分

 紙面から]ソーシャルブックマーク