<日本ハム2-3阪神>◇30日◇札幌ドーム

 勝利に沸く笑顔の列で、阪神守護神、藤川球児投手(29)だけは苦笑いだった。バスに続く札幌ドームの通路。開口一番、出た言葉は「助けられたね」だった。

 1点リードの9回。先頭小谷野に今季初被弾となる同点弾を浴びた。09年8月14日の巨人戦でラミレスに浴びて以来、登板40試合ぶりのアーチを、手痛い所でかまされた。後続は意地の3人斬りで仕留めたが、試合は延長へ。「勝てて良かった。打線もそうだしナベにも助けられた」。チームは11回に決勝点を奪ったが、渡辺に余分な2イニングを投げさせるなど、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 真弓監督初の勝負手に、1発回答するつもりだった。先発久保が1点差に迫られた8回2死一塁の場面。29日今季初の2イニング登板したばかりだったが、再びお呼びがかかった。2日続けて8回からの登板は09年9月以来。今季初の2日連続イニングまたぎで、指揮官の勝ちたい思いを一身に感じていたが落とし穴が待っていた。登板直後の8回は城島とのあうんの呼吸で紺田の二盗を見抜き、ウエストで刺してチェンジにした。だがその際、打者小谷野に7球を要したことが、9回被弾への伏線となっていた。

 「前の回、小谷野はたくさん球を見ていた。タイミングが取れていてそこが怖かった」(久保投手コーチ)。0-1からの内角シュート。藤川も「甘くは入っていない」とした1球だったが、タイミングが合っていた分「うまく打たれた」。これで久保の1カ月ぶり勝利もフイ。「やられてはいけないんだけど。イニングまたぎ?

 問題ない」。痛恨の1球に唇をかんだ。

 だが真弓監督は責めなかった。「昨日2イニング行って今日はいつもの球児じゃなかった。(8回投入は)あそこ(1点差)まで行ったからね。しんどい思いをさせすぎた」。体調を気遣い、最後は“おわび”の一言まで受けた。前夜は鶴をすしに誘い、プロ初勝利を祝ってあげた。そんな心優しき守護神の1度だけの失敗を、だれも責めることはない。

 [2010年5月31日10時40分

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