<楽天3-7阪神>◇2日◇Kスタ宮城

 誰が猛虎打線の主役にふさわしい?

 虎党世論調査をしたら、うれしい悩みになりそうだ。同点の7回満塁で空振り三振に倒れた4番金本知憲外野手(42)は1点を追う9回1死一、三塁にきっちりお返しの同点タイムリー。同じく7回に凡退していた5番新井貴浩内野手(33)は勝ち越しの犠飛。鳥谷、平野の1、2番は8出塁。城島はダメ押し3ラン。首位巨人との差を1週間ぶりに3・5差に縮めた。G倒のマニフェストは簡単には変わりませんぞ!

 冷静でいられなかった。いや、いられるわけがなかった。大学時代に4年間を過ごした思い出の地、仙台。特別な思いが詰まるこの場所で、金本は今季4度目のヒーローインタビューに呼ばれた。虎党から、拍手喝采(かっさい)を浴びる。心地よさそうに眺めながら、アニキは叫んだ。

 金本

 巨人が大敗しているので、どうしても今日は勝ちたかった。ここに来ると感じがいいし、雰囲気がいい。思い出がたくさんある球場なので、僕は仙台が好きです!

 1点を追う9回。土俵際まで追い詰められていたチームを、自らのバットでよみがえらせた。1死一、三塁の絶好機。たった3球で2ストライクと追い込まれたが、極限にまで達した集中力は、アニキの表情を鬼気迫るものへと変ぼうさせた。

 迎えた5球目。楽天守護神川岸の手元が狂う。甘く入ってきた球を、百戦錬磨の男が逃すわけがない。バットの根本付近でとらえた打球は完全に詰まらされたが、金本の気迫が勝った。右前へポトリと落ちる同点適時打。土壇場で試合を振り出しに戻し、新井の決勝犠飛を呼び込んだ。

 金本

 その前の満塁で打っていればもっと違った展開になった。その時に打ちたかった。前の打席でバットに当てることができなかったので、当たりとかより、どっかに飛んでいって、1点入ればいいという気持ちだった。ホッとした。

 反省を込めて振り返ったのは7回の第4打席。同点の1死満塁という絶好機で、空振り三振に倒れた。しかも相手は、代わったばかりで19歳も年下の片山。続く新井も右飛に倒れ、チームは無得点に終わった。同じ失敗は繰り返さない。9回は必死の思いでリベンジを果たした。

 真弓監督も顔を紅潮させて4番を称えた。「ああいうチャンスで2回も3回もミスすることがない。最後はしっかり打ってくれました」。金本も「1日も早く肩を治して、守備について全部出られるようにしたい。こういう勝ちで勢いをつけてどんどん連勝を続けたい」と早期スタメン復帰を公約。今季18度目の逆転勝ちで首位巨人に3・5差。先導役を担ったのは、やはりこの男だった。【石田泰隆】

 [2010年6月3日12時17分

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