<阪神4-7広島>◇21日◇甲子園

 阪神平野恵一外野手(31)が首位打者で前半戦を締めくくった。17日のヤクルト戦で一塁への判定でアウトになった際、ヘルメットを地面にたたきつける「侮辱行為」で退場になったが、その試合以降5試合は19打数10安打、打率5割2分6厘の大当たり。笠原審判員から「子どものファンが見ている」と諭され大きくうなずいたガッツマンが、多くの虎党の夢達成に突っ走る。

 小さな巨人がテッペンを取った。規定到達者のリーグトップに「平野」の名が記された。5回無死二塁、広島篠田の139キロ直球を三遊間に転がし、打率は3割5分に上昇。4打席目は二ゴロで、前半戦は3割4分9厘で終えた。前日まで首位打者の同僚マートンが下降。2位中日和田に1厘2毛差をつけての首位打者だ。5年ぶりの球宴に、セ最高打率の「称号」を背負って行く。

 バットとともに、攻める気持ちを握りしめている。「(走者を)かえす気持ちで打ちました。つないで、つないでっていう弱気な自分には注意しないといけない」。節目の100安打にも到達した。6点を追いかける3回。1死満塁、逆転の虎を信じたファンの声援も自然とわき上がる。期待を一身に背負い、低めの直球をピッチャー返しだ。篠田のグラブを弾き、打球は二塁方向へ。反撃を予感させる1点を奪った。5回のヒットを合わせて、得点打率も堂々リーグトップ3割7分の勝負強さだ。

 6月22日の同じ広島戦(米子)、チームとして屈辱を受けた。1点差の4回に、1死二、三塁で相手の作戦はツーランスクイズ。奇策で逆転を許した。米子の夜、酒を片手に平野は憤った。「あんなのありえない。なめられている」。リーグ2位につけながら、真の強さとは何かを求め続けていた。

 17日のヤクルト戦(神宮)、内野ゴロの判定にヘルメットを地面にたたきつけ自身初の退場処分を受けた。真剣さゆえ、とっさに出てしまった行為だった。翌日、退場を宣告された笠原塁審に「多くの子どものファンが見ている」となだめられ、深く反省した。その試合を含め、ここ5試合は打率5割を超える猛打だ。

 「危機感をもってやっています」。クラブハウスへ向かう通路でも個人成績には興味を示さなかった。「成績はシーズンが終わって、チームが優勝してから」。自身が頂点に立っても、欲求が満たされることはない。望むのは虎党に夢を与える、チームの頂点だ。

 [2010年7月22日12時32分

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