<阪神22-8広島>◇25日◇京セラドーム大阪

 伝説の85年日本一打線に、平成の猛虎が肩を並べた。シーズン5度目の1試合5発。8回の猛攻で代打から2打席目が回ってきた桧山進次郎外野手(41)が今季1号で仕上げた。桧山と金本の40歳代アベック弾は、プロ野球史上初の快挙。7回、代打浅井の3号2ランがこの日のチーム10安打目。シーズン60度目の2ケタ安打も、あの85年シーズンに並ぶ記録となった。

 黒虎祭りの大とりは、神様桧山のひと振りだった。2イニング連続で7点を奪って押せ押せの8回だ。代打で中前打を放ち、さらに打者一巡の猛攻で巡って来た2打席目。「同じピッチャーで2打席回ってきたんで気持ち的にも余裕があった」。梅津のシュートを完ぺきに捕らえ、右翼席に運んだ。時計の針は午後10時を回り、鳴り物応援がやんでも声を枯らし続けた虎党に、感謝の暑中見舞いだ。

 昨年4月23日中日戦以来の1号3ランでこの回10点目。さらにこの1発が球団新の22得点を刻んだ。「新記録は終わってから初めて聞いたよ」。神様も目を丸くしたが、記録ラッシュはこれだけではなかった。

 城島、金本、浅井、鳥谷に続く5アーチ目で、85年に年間5度記録した1試合5発の球団記録にも並んだ。さらに究極のおまけは、42歳金本と41歳桧山の40歳代アベックアーチ。これは、プロ野球初の快挙でもあった。回の2打席目のため、13本で八木裕と並んでいた代打本塁打の球団新記録樹立はならなかった。だがその1本はまさに、新たな猛虎史を刻む千金弾だった。

 天国の父も力を貸してくれたのかもしれない。8月中旬まで、17打席無安打と落ち込んだ。そんな時、京都市内で眠る父隆一郎(05年死去、75歳)さんの墓前を訪れた。「同じヤルなら思い切ってやれが口癖。夢を持ち続けることの大切さを説いてくれた人だった」。開幕前やお盆、命日のほか、野球で悩んだ時は訪れる場所。静かに目を閉じ、手を合わせることで、神様は完全復活した。

 18席ぶりのヒットが出たのは、直近の13日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)。その日を境に、ここ4試合で5打席4安打と打ちまくり、元気を取り戻した。「僕もばりばりの阪神ファンやったけど、ドラフトで3位以上でなければ、プロに行かないといってた。でも4位で指名されて悩んでた時、“弱い阪神を強くせい。プロで野球をするのが夢やったんやろ”と背中を押してくれたのが父でした」。天国に捧ぐ記録ずくめのホームラン。神様は優勝まで打ちまくる。

 [2010年8月26日11時25分

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