<阪神5-0ヤクルト>◇12日◇甲子園

 オール・フォー・秋山で猛虎がまとまった。新井貴浩内野手(33)はルーキー右腕の好投を意気に感じ、3安打1打点に好守でバックアップした。今季通算99打点でラミレス、ブラゼルに次ぐ大台に王手。4番の仕事を果たせずに唇をかんだ11日の悔しさも晴らした。

 24時間前は悔しさを吐き出したベンチ裏に、新井の会心スマイルがあった。「ナイスピッチ!

 大したもんやね」。打のヒーローは自身の活躍をさておき、秋山の快投を喜んだ。「先頭を出したのは2回だけ?

 すごい。ハートもあるし、高卒1年目と思えない技術がある。あれだけ低めにコントロールするのはすごいことですよ」。目を丸くして絶賛の嵐が止まらない。それだけうれしかった。そして自身も大きな刺激を受けていた。

 若虎がこの日最初の0をスコアボードに刻んだ直後、1回の攻撃だ。平野と鳥谷の連打で1点を先制すると、4番のバットもうなりを上げた。カーブをとらえ、阪神移籍後初の100打点に王手をかける左前タイムリー。速攻で秋山に2点目をプレゼントした。

 前日は屈辱に打ちひしがれるしかなかった。藤川がプロ初の逆転弾を浴びた直後、8回1死一、二塁のチャンスで一邪飛。同点打なら球児も救われた場面で、4番の仕事を果たせず、4打席無安打に終わった。「何とかしたかった」。3連敗の責任を感じ、唇をかんだ新井に、和田打撃コーチは力み過ぎを指摘した。「力以上のものは出せないし、いかに平常心で立てるか」と。そんな時、目の前で力まず、平常心で躍っていたのが秋山だった。

 3回に投手強襲ヒットを放つと、8回には橋本から右中間二塁打。猛烈なヘッドスライディングで二塁を陥れ、スキをついた三盗も成功。城島の二塁打でダメ押し5点目のホームも踏んだ。「全部一生懸命やってます」。4回の守備では、飯原のゴロをジャンピングスローで間一髪アウトにした。

 「次も頑張ってほしい」。早くも秋山の4勝目を楽しみにした主砲は最後に、プロ野球を支えた名物審判への感謝も忘れなかった。「今日が最後ですよね、谷さん。長い間本当にお疲れ様でした」。この日限りで審判を引退した谷博さん(57)の公正なジャッジは、野球人として成長できる糧になった。全力プレーは心からのありがとう。人と人との縁を大切に、虎の4番道をいく。【松井清員】

 [2010年9月13日12時21分

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