中日が4年ぶり8度目のセ・リーグ優勝を果たした。7月には最大で8ゲーム差をつけられたが、圧倒的な投手力で夏場から逆襲し、9月10日に首位浮上。試合のなかった1日、阪神が広島に敗れ、球史に残るデッドヒートを制した。

 ついに和田一浩外野手(38)が優勝をつかみとった。中日で味わう初めてのビールかけ。喜びを素直に表現した。「うれしいです。自分も小さいころからドラゴンズファン。なかなか優勝することはなかったけど、中日が優勝したときはうれしかった。ファンの方は喜んでくれていると思う」。契約最終年。中日ナインとして初めて美酒に酔いしれた。

 落合監督に請われ、西武からFA移籍して3年目。その間、チームは3位、2位と優勝から遠ざかっていた。移籍1年目の08年は古巣の日本一をテレビで見つめた。昨年末に来季の目標を問われ「なんとかチームが優勝できるように頑張りたい。それが一番」としみじみと話した。

 何があっても打席に立ち続けた。8月10日横浜戦(甲府)。自打球が左足甲の内側に直撃。数日前にもまったく同じ個所に自打球を当てていた。患部は野球のボールほどに赤く腫れ上がり、医師の診断は「骨挫傷」。完治には1カ月程度はかかるという診断だった。それでも「欠場」という選択肢はなかった。

 攻撃時は厚さ1・5センチのやわらかいパットをスパイクの上から当て、テーピングした。周りから悟られないようにユニホームのズボンのすそで隠した。守備に就くときは特製ガードを取り去る。攻守交代の際にベンチ裏でその作業を繰り返した。「自分は命をかけてというくらいの気持ちで打席に立っている。これからもそのつもりです」。

 今季は37本塁打と、38歳にして6年ぶりに自身の本塁打記録を塗り替えた。セ・リーグMVP候補の筆頭でもある。「体調を整えて次に臨みたい」。まだ勝負は終わっていない。次は“優勝請負人”がチームを日本一に導く。【桝井聡】

 [2010年10月2日8時45分

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