ソフトバンク小椋真介投手(30)がチェンジアップで一皮むける。プロ12年目の今季は4月に先発初勝利をマーク。「松坂世代最強左腕」と呼ばれた大器が、遅咲きながらほぼ1年間ローテーションを守り抜いた。それでも4勝8敗と黒星が先行。来季こそ貯金をもたらす投手となるべく、同い年の杉内俊哉投手(30)、和田毅投手(29)らの投球を支える球種を習得することを決めた。

 小椋が3日、新兵器習得へ乗り出した。秋季キャンプ第1クールの最終日。暖かい日差しを浴びながら、リラックスムードでキャッチボールを行った。「落ちた?

 使えるかな」。練習相手に確認しながら投じていたのは、杉内や和田の持ち球でもあるチェンジアップだった。

 「遊びでやっていただけ。チェンジアップ習得?

 分析が甘いですよ」

 シャイな性格らしくせんさくされることを嫌い、ごまかした。それでも来季につながる新たな武器をこの秋で手に入れるつもりだ。11年間伸び悩んでいた左腕を先発として再生させた高山投手コーチは話す。

 「小椋?

 いろいろ試しているところ。結果を出している投手は変化球の精度がいい。ダル(ビッシュ)にしてもいい変化球を持っている。松坂にしても。うちでも活躍している投手は変化球がいい」

 チーム内でも今季2人で33勝をマークした杉内、和田はチェンジアップを巧みに操る。比較すれば和田はスライダーで勝負する割合が高いが、杉内にとってはチェンジアップは伝家の宝刀。中指を浮かせ4本の指で握る独特の握り方で「真ん中を狙って思い切って腕を振るだけ」と表現するその球で打者を惑わし、今季も218個の三振を奪った。直球と全く同じ鋭い腕の振りで投じられ、タイミングを完全に外すことができる。

 小椋はこれまで中指と人さし指で挟むフォークに近い握りの球で緩急の差をつけていたが、疲れてくるとすっぽ抜ける危険も高かった。速球は150キロ前後の球速を誇るだけに、タイミングを外す変化球はそれだけで大きな武器になる。今季は4勝8敗。同い年の杉内、和田は今季2人で18の貯金をつくった。来季の完全復活を目指す新垣も含め「同い年カルテット」で連覇を成し遂げるためにも、遅咲き左腕が決め球をマスターする。

 [2010年11月4日11時25分

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