楽天の本拠地Kスタ宮城が、あわや水没の大ピンチに見舞われた。22日の東北地方は季節外れの豪雨に見舞われ、仙台管区気象台によると、仙台市の降水量は12月としては観測史上最高に達した。雨脚が強まった正午すぎには、みるみるうちにスタンドが浸水。球場の保守管理はすべて楽天球団が行う取り決めとなっているため、職員総出で球場内への浸水を防ぎ、事なきを得た。来季、星野監督がタクトを振る舞台を全員で守った。

 冬至の昼下がり、Kスタ宮城をゲリラ豪雨が襲った。午後1時10分までの1時間降水量は、仙台の12月の観測史上最高、42ミリに達した。水は、スタンド上方から階段を伝って滝のように流れ、グラウンドからは、湧き出すようにベンチなど低い方へと押し寄せた。

 緊急事態だ。西村取締役が「手の空いている事務職の方も手伝ってくれ」と号令をかけた。スーツ姿、作業服、パンプスをはいた女性。球場内の売店や事務所から、格好がまちまちの球団職員が次々に駆けてきた。7月にもゲリラ豪雨に襲われたが、現場に到着した職員は「夏よりまずい」。電気系統のショートを避けるためコード類を高所へ逃がした。土のうにテープ、排水パイプやバケツリレー。ベンチまでは冠水したが、マンパワーでKスタ内部への侵入を阻止した。

 ひと安心と思いきや、職場に戻れる状況ではなかった。球場前の県道が冠水して通行止めになり、パトカーも出動していた。Kスタのある宮城野原公園は、球場を底辺としたすり鉢状の地形。今度はKスタがのみ込まれかねなくなっていた。正面入り口の水位はヒザ付近まで到達し、長靴も役を果たさない。スラックスをひざまでたくし上げてのバケツリレーが始まった。室内練習場で自主トレ中の藤原、松崎、楠城らは心配し、ジャージー姿でマイカーを見に来た。水に埋まる車輪に「うそ…」「ありえない」。びしょぬれで高所へ移動させた。まさに水際で難を逃れた。

 楽天の球団職員はこの球場に深い愛着を持っている。新規参入した05年シーズン。宮城県と話し合い、老朽化の激しかった宮城球場の改修費を全額出資することで本拠地使用が決まった。米田代表は「仙台は寒いから、工事が進まなくて。何とか開幕に間に合った時は泣けてね」と、誕生当時をよく覚えている。年間支払う球場使用料は少額の一方、管理運営の責任は球団が負う。苦労して作り上げた宝物を、大雨ごときで傷つけるわけにいかなかった。

 思わぬ形で楽天スタッフの結束力が証明され、雨降って地は固まった。みんなの愛着が詰まった「おらが球場」。おとこ気あふれる星野監督が暴れるにふさわしい舞台だ。【宮下敬至】

 [2010年12月23日9時26分

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