佑ちゃんが上々の第1歩を踏み出した。日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22=早大)が13日、韓国サムスンとの練習試合で実戦初登板を果たした。名護市営球場に収容人数を上回る5200人が集まる中、4回から2番手で登板。上位打線を相手に1回無安打無失点に抑えた。最速は139キロとやや物足りなかったが、メジャー通算55本塁打、250打点の3番ライアン・ガーコ(30)に投じた外角低めへの直球で、プロとしてやっていけるという確信をつかんだ。次回登板は20日ヤクルトとの練習試合で予定されている。

 佑ちゃんは確信した。空振り三振で1死を奪い、3番ガーコ。米インディアンスでプレー経験のある右の強打者と相対した。闘争本能にスイッチが入った。3球目。外角低めにコントロールしたスピンの利いた直球が決まった。タイミングを合わされたが、力強いボールはバットをかすめて鶴岡のミットに収まった。明るい未来が、少し見えた。

 斎藤

 低めに制球されたことと、芯でとらえられなかったことが一番。そのボールがコンスタントにいけるようになったら、もしかしたらプロでやっていけるのではないかと思います。ちょっとホッとしました。

 昨季公式戦2位でプレーオフに進出した韓国の強豪相手に初の実戦マウンド。直球主体、内容重視でいくと決めていた。前日から結果ではなく「(打者が)差しこまれているか、ファウルの打ち方はどうか。空振りはいらない」とこだわった。そして、球威もキレも納得できるボールを1球だが、投げられた。

 先頭の2番朴漢伊(パク・ハンイ)には3ボール2ストライクから、ウイニングショットは真ん中低めのツーシーム。空振り三振に仕留めたものの満足はしていない。このやや沈んだウイニングショットが象徴するように、大半の直球は打者の手元で微妙な変化を見せたが、元メジャーリーガーへの1球だけは別。ガーコは遊ゴロ、4番の崔炯宇(チェ・ヒョンウ)は二ゴロと3者凡退で終えても「今日は60点」。そんな中で納得がいった1球。最速139キロとやや物足りなさも残ったが、数字以上の手応えがあった。

 練習試合とはいえ、初の実戦登板に向けて何かにすがりたかったのか。周囲の関係者によると、第3クール突入直前の9日のオフには、両親と沖縄のパワースポットに出かける計画を温めていたという。そこは、南城市にある琉球王国の象徴の1つとして有名な史跡「斎場御嶽(せーふぁーうたき)」。地元出身の真喜志内野守備コーチから入念に情報を仕入れ、「行ってみたいんです」と準備をしていたという。ただ、キャンプ地の名護からは方角が悪いとも教えられ、断念したという。

 そんな中で立った初マウンドで、自分自身に課した第1関門をまずは突破した。「無ではないですけれど、緊張することなく投げられました」と解放感に浸れる1球が投げられた。佑ちゃんは、新たなステージでさらなる高みへと向かう。

 [2011年2月14日8時32分

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