<日本ハム3-2ソフトバンク>◇7日◇札幌ドーム

 日本ハム中田翔内野手(22)が、チームの天敵ソフトバンク杉内を粉砕した。昨季1勝5敗(4完封負け)と苦汁をなめさせられた相手から、2点を追う5回1死二塁の好機に、右翼ポール際への同点2ラン。プロ入り初めての右方向へのアーチは、今季初の2試合連続本塁打となった。首位攻防第2ラウンドを制し、チームは再び単独首位に浮上した。

 怪物の進化は、急速だ。「あそこまで飛んでいると思わなかったし、切れてファウルになると思った。どうしても点が欲しいところだったし、『切れないでくれ』と思いました」。2点を追う5回1死二塁。変化球が3球続いた後の、141キロ直球を中田がたたく。振り遅れ、差し込まれた。それでも、しっかりと体重をぶつけた打球は、右翼ポール際へ消えた。

 「反応で手が出た。右方向に1本出たのが大きいと思う」。プロ13本目で初めての右方向への本塁打だ。今季初の2戦連発でチームトップの打点を17に伸ばし、打率も2割7分6厘まで上昇。開幕19打席無安打と出遅れたが、梨田監督も「やっとキャンプの成果が出てきた。中田の本塁打が出るまでは、完全に負けゲームだった」とたたえた。

 プロ4年目。「今年はゆったりと余裕を持って打席に入れています。去年までとは違う。涌井さんや和田さんが相手でも、まったく打てそうにないという感じではない」。だが、そんな中でただ1人、今でも“嫌い”なのが杉内だと明かしていた。「球速は出ていないけど、めちゃくちゃ速く感じる」、と。打ったのは、まさにそのボール。お立ち台では「自信になると思います」と笑顔を見せた。

 寮の自室には、1枚の新聞記事がはられている。2軍でもがいていた新人時代に自分が評論されたもの。屈辱の見出し。「中田は5年かかる」。目に見える位置へ、わざとはった。「見るたびにくそってなるから。まぁ、ホントに4年かかってるけど」。高校時代を関西で過ごした中田らしく「オチ」をつけて笑わせたが、目は、マジだった。

 試合の流れを変える一振りで、チームを再び単独首位へと導いた。それでも「打てないときも来ると思うし、そのとき自分がどう対応できるか」。成長したのは、技術だけじゃない。怪物の進化は、急速だ。【本間翼】