<楽天3-4巨人>◇17日◇Kスタ宮城

 またしても伏兵のV打で巨人が逆転勝ちだ。3-3の9回、2死満塁から円谷英俊内野手(26)が値千金の勝ち越し適時打を放ち、試合を決めた。1点を追う最終回に2死走者なしから、この日1軍復帰した阿部慎之助捕手(32)が中前打で出塁し口火を切った。2死一、二塁となり7番矢野謙次外野手(30)が起死回生の同点打。小笠原、亀井の相次ぐ故障離脱の中、全員野球で底力を見せた。土壇場の逆転勝ちでチームは5割復帰。原巨人が交流戦で幸先のいいスタートを切った。

 思いきりのいいスイングだった。9回2死満塁、円谷が楽天守護神サンチェスの剛速球を打ち砕いた。153キロを迷いなく引っ張った。一、二塁間を鋭く抜けた当たりは、勝ち越し右前適時打となった。ハイタッチで出迎えられ、はちきれんばかりの笑顔を見せた。5年目26歳。プロ2安打目が値千金のV打となり「きれいなヒットはいらなかったので。結果が欲しかった。最高です」と素直に喜んだ。

 小笠原、亀井の相次ぐ離脱、脇谷の不振で巡ってきたチャンスだった。15日に1軍昇格し「7番三塁」でプロ初スタメン。右手を骨折し離脱した亀井は、円谷の師匠でもあった。今年1月からの自主トレには志願して弟子入り。ジャイアンツ球場で守備、打撃練習をともにしてきた。「グラブさばきとかみてもセンスがいいし、参考になります。亀井さんも大変だと思うのに、僕に教えてくれるので有り難いです」と、三塁転向など、背水の覚悟で臨んでいた亀井に感謝の思いを持ち続けていた。

 謙虚だ。試合前、スタメンが決まると、その感謝を胸に秘め「結果を出すだけです」と力強く言った。言葉通り、最高の結果で恩返し。それでも「代役という役割ですけど、そういう選手が底上げできるように頑張っていきたい」と、自身を「代役」と話す。初対戦の岩隈にも「まっすぐが速いというイメージ。力で抑えると思っていたけど、緩いのもあるんだ、と。幅の広さが身に染みました」と、脱帽した。そんな若武者がヒーローになった。

 口火はこの日から1軍に復帰した阿部だった。2死走者なしから、今季初安打となる中前打を放った。好調の長野のオーラが暴投と敬遠を誘い、7番矢野がカウント2ストライクと追い込まれてから同点打。8番鈴木も四球でつなぎ、最後に決めたのは円谷だった。

 4日には実松のプロ初のサヨナラ打で劇的勝利を飾った。5月に入り、故障離脱が続出する中、原監督の伏兵起用が劇的な勝利を生んでいる。土壇場での逆転劇に「剣が峰というかね、そういう状況からよく逆転しましたよね。若い人が、ああいう勝負強さを見せてくれたのは、チームにとって明るい材料ですね。1点差のゲームで明日もスリリングな野球になると思います」と、円谷ら若手の集中力を喜んだ。交流戦白星発進で5割に復帰。原巨人の底力を見せた大きな1勝だった。【斎藤庸裕】

 ◆巨人が9回2死無走者から逆転勝ちは、95年5月21日中日戦以来、16年ぶり。円谷の安打は09年8月18日横浜戦の本塁打に次ぎ2本目(V打は初)で、打点を挙げたのも前記横浜戦(4打点)に次いで2度目。今季、巨人が9回に決勝点を挙げたのは5月4日阪神戦(V打実松)7日中日戦(V打坂本)に次いで3度目。4日の実松は5年ぶりの打点、この日の円谷はプロ2安打目と、土壇場で伏兵の一打が出ている。