<中日6-1楽天>◇23日◇ナゴヤドーム

 交流戦首位打者だ!

 中日荒木雅博内野手(33)が3打数2安打2盗塁と大暴れ。打っては勝利を決定づける2点タイムリー三塁打を放つなど交流戦トップの打率4割8分(リーグは打率3割4分2厘で2位)に浮上。走っても球団史上3人目となる通算300盗塁へあと「2」とした。チームは星野楽天に連勝で貯金を今季最多の3。首位ヤクルトに1ゲーム差に接近だ。

 勝利の行方が揺らぎかけたその時、荒木のバットが一閃(いっせん)した。2-1と1点差にされた直後の7回1死一、二塁。楽天美馬にカウント2-2と追い込まれながらも、食らいついた。

 「あの打席、ボールが見えているという感覚はあった。何とか打ちたい一心で粘りました」。

 外角いっぱいのスライダーをカット、同じコースにきた速球にも2球続けて食らいついた。そして、8球目。根負けしたようにわずかにあまくきた変化球を左中間へ。前進守備の外野の頭上を抜く2点適時三塁打で勝負は決まった。

 5月5日ヤクルト戦から続く連続試合安打は「13」にまで伸びた。この日も3打数2安打で交流戦の打率はトップの4割8分、リーグでも打率3割4分2厘とヤクルト・バレンティンに次ぐリーグ2位まで浮上した。遊撃初挑戦の昨季、自身最悪の20失策ともがき苦しんだ1年で光明を見いだしたのが、落合監督の代名詞・神主打法のような構えにした新打法だ。今季も開幕から低調だった打線の中で唯一コンスタントに安打を放った。連続試合安打継続中でも「打席に立てば、数字のことは頭から消えている。変な重圧はないよ」「心は技術で補える」-。落合監督からもらった言葉を体現するように、荒木の打撃には迷いがない。

 足でもチームを引っ張った。初回、四球で出塁すると次打者・井端の初球にスタート。左腕川井-中谷のバッテリーから悠々と二塁を陥れた。さらに5回には三塁手の守備位置が深いと見るや、三塁線へ絶妙のセーフティーバント。そして、またも井端の初球にスタートを切ると通算298個目の盗塁を決めた。球団史上3人目、300盗塁の大台へあと2つ。「昔と比べてスピードが落ちたとは思わない」。そう言い切る33歳の切り込み隊長の快足は連覇への重要な武器だ。

 この日の試合前練習、荒木は体に疲労感を感じていた。それでも「スタートだけはやっておこう。つらい時こそ、やるのが大事だから」。練習終了まで黙々と繰り返したスタートダッシュ。積み重ねた盗塁の裏には何万本もの“空走り”があるのだ。

 「ちょっと打線になりつつあるかな、というとこだな。あとは3番(森野)次第だ。(打率が)1割台だもん」。首位に1ゲームとした落合監督は勝利の後ならではの短いコメント。エンジン全開のトップバッターに引っ張られ、オレ竜打線が本領を発揮し始めた。【鈴木忠平】