<日本ハム5-4ロッテ>◇6月30日◇札幌ドーム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が、奪三振記録を積み上げ、両リーグ通じて10勝に一番乗りした。ロッテ戦に先発し、8回7安打2失点。横手投げも交えロッテ打線を翻弄(ほんろう)し、4試合連続2ケタとなる13三振を奪った。通算ではレッドソックス松坂(元西武)にも並ぶ45度目の2ケタ奪三振で、ソフトバンク杉内と並び現役最多となった。6年連続2ケタ勝利も記録し、チームの連敗を3で止めた。

 ダルビッシュが、「二刀流」を見せた。上手と横手の2投法を駆使して、8回で積み上げた奪三振は13。4回は今江を149キロの外角低めカットボール、里崎を外角高め152キロ直球で空振り三振。いずれも横手からで、浮き上がるような球筋で切った。コンディションが完全ではない中での創意工夫が、この日の生命線になった。

 吉井投手コーチによれば、横投げは「131球で十数球くらい」という。微妙な違いだが、196センチの超大型サイドスローは、変幻自在に相手打線を分断できた。変身の理由について、ダルビッシュは「甲子園でいろいろあって…。ここだけの話で…」と、グッとのみこんだ。

 即興のモデルチェンジは、15日の阪神戦に始まった。自身の8連勝が止まったこの日の試合中、突如としてサイドスロー気味の投球を交えた。そこから、この日で3試合目。前戦24日のソフトバンク戦では、対戦慣れしている小久保らが面食らったほどの腕の振り、球の軌道でねじ伏せた。「(従来の)スリークオーターで投げてもいい球がいかなくて、面白くなかった」という気まぐれ?

 をきっかけに、大胆にシフトした。

 横投げの契機となった阪神戦では、滑る感覚があった統一球への対策だったとみられる。大胆な発想で乗り切る離れ業。プロ入り7年目で12試合目での2ケタ白星は最速。6年連続での大台到達は、球団史上2人目という快挙を達成した。「小、中学校の時はそうでしたから」という原点回帰のサイド投法。捕手の鶴岡も「こっちもいきなりでビックリ」という高速カーブ、カットボールなどを意のままに操った。ソフトバンク杉内に並ぶ現役最多45度目の2ケタ奪三振で、痛快に節目を彩った。

 卓越した力と技、そしてひらめきともいえる感性で築き上げたオンリーワンの投手像。24歳で抜群の安定で積み上げた実績のバックボーンを、証明するような一戦になった。今季初のチーム3連敗も軽々とストップ。薄氷の1点差勝利になった梨田監督も「3連敗の後だしね」と、敬服した。頼れるエースは「こんなにうまくいくとは…」と、静かに10勝目をかみしめていた。【高山通史】