<ヤクルト6-5中日>◇13日◇神宮

 ヤクルトの4番畠山和洋内野手(28)が、本塁打を打てば負けない不敗神話を9試合に伸ばした。2点を追う4回に左翼席に11号同点2ランを放ち、3連勝に貢献。初出場するオールスターでは、ヤクルト日本人野手としては19年ぶりに全セの4番を務める可能性が浮上した。チームは延長10回2死満塁から相川がサヨナラ右前打を放ち、今季6度目のサヨナラ勝ち。今月早くも3度目のサヨナラで、2位中日との差を今季最大の6ゲーム、貯金も最大の14に伸ばした。

 時計の針は、午後10時を回った。もう次の回はない土壇場10回2死満塁。相川の打球が右前に抜けると、ヒーローの元に全選手がダッシュを決めた。神宮に水が舞う、今月早くも3度目のサヨナラ劇だ。

 そのおよそ2時間前。

 重心を低く落とし、がに股スタイルで集中力を研ぎ澄ませる4番畠山がいた。2点を追う4回無死一塁、左足を大きく上げて、143キロ直球をしばきあげた。カウント3ボール1ストライクから、中日吉見の直球を待っていた。

 「いいピッチャーだし、つなぐ意識だけだったが、最高の結果になってくれました」と喜んだ。22試合ぶりとなる今季11号の同点2ラン。左翼席中段にたたき込んだ一打が、反撃の合図だった。これで本塁打を打てば負けない不敗神話を9試合に伸ばした。「そういう打順を打ってるので、ちゃんと仕事をすればついてくるのかな」と不思議がった。

 前日12日には、試合前に宮本、青木らと一緒にオールスターで監督を務める中日落合監督にあいさつした。岩手・花巻市出身で、高卒11年目につかんだ初出場。今年は3試合開催で、Kスタ宮城で行われる24日の3戦目などでセ界の4番を務める可能性は十分ある。ヤクルトの日本人野手がオールスターの4番を張れば、92年第1戦の広沢以来19年ぶりになる。

 この日は、日差しの厳しい午後1時30分過ぎから早出特打を行った。長袖アンダーシャツをビショビショにして打ち込むと「やせようと思ってるわけじゃないよ」。打撃グローブは、昼から手のひらの部分がビリビリに破れるまで振った。

 延長10回は1死から畠山が四球。バレンティンが10球粘って左前打を放ち、代走野口が三塁まで好走塁を決めた。最後は相川が殊勲打を放った。日替わりヒーローが生まれる強いチームに、どっしりとした4番がいる。【前田祐輔】