異例の早期アタック!

 阪神が、マット・マートン外野手(29)と来季契約に向けた交渉をスタートしていたことが29日、分かった。球団の渉外担当がすでに米国でマートンの代理人に接触し、最初の交渉を終えていた。2年契約の2年目を迎えた安打製造機はメジャー復帰の可能性もあり、シーズンを2カ月以上も残した段階で残留を求め、誠意と熱意でハートを揺さぶった。

 太平洋を越えて、誠意を伝えた。阪神が、2年契約の最終年を迎えるマートンに対して、早くも来季契約の交渉をスタートさせたことが明らかになった。

 球団幹部が口にした。

 「向こうで少しぐらいは話をしている。まだ最初の段階ではあるが(契約の)話し合いは始めている」

 向こうとはずばり米国だ。球団では坂井オーナーが今月10日から渡米して、ヤンキースと提携球団のブレーブスのゲームを視察した。その際に同行した渉外担当は、15日の坂井オーナー帰国後も現地に残ってウィリアムス、シーツの両駐米スカウトと意見交換を行った。さらにマートンの代理人と来季契約に向けた残留交渉の口火を切っていた。

 マートン残留は、球団にとって重要事案。ファンにとっても大きな関心事だろう。来日1年目の昨季はイチロー(当時オリックス)を上回り214安打をマークしてプロ野球記録を樹立。今季は打率3割2厘、8本塁打、33打点をマーク。飛ばない統一球の影響で打撃部門の数字がリーグ全体で低下する中で存在感を発揮。打率は巨人長野に次ぐリーグ2位。自慢の広角打法で今季は1番、3番、4番、5番、6番とマルチな役割も果たしている。

 マートンは29歳と若く、日本での活躍ぶりから米大リーグ復帰も選択肢に浮上してくる。球団としては助っ人の母国も交渉のライバルとして視野に入れる必要があり、先手を打つ意味でも早期アタックでハートをつかみたい思いがあった。

 阪神は過去、外国人選手の補強に苦戦してきた。途中帰国も多く、助っ人の契約交渉はシーズン後に行うことが通例だった。しかし2年目を迎えたマートンの活躍ぶりから、前例を度外視。いち早く交渉の開始を決定した。レギュラーシーズンを2カ月以上も残した段階でのスタートこそ、球団として必要戦力であることの証しだった。

 プロ野球選手にとって、アクシデントはつきものだ。残りのシーズンで故障や思わぬ大不振のリスクは残されているが、まずは球団として来季残留を強く望んでいる方向性を示した。2012年シーズンもマートンが、タテジマに袖を通すよう、交渉を今後本格化させる。