<阪神4-6中日>◇13日◇甲子園

 天国の久万元オーナーから、激しいげきが飛んでいる。21年の長きにわたって球団オーナーを務めた久万俊二郎氏の死去が公表された日にタイガースは敗れた。4連敗で借金転落、首位ヤクルトに8ゲーム差となり、今日にも自力Vが消滅…。正念場を迎えた真弓明信監督(58)はチーム強化が名物オーナーへの一番の報いと奮起した。

 ふたつの悲しみが夜の甲子園を包んだ。追い上げも届かず、中日3連戦の初戦を落とした。首位ヤクルトが勝ったため、ゲーム差は「8」に開いた。きょう14日にも自力優勝の可能性が消滅する。デッドラインが目前に迫った。「点を取れるところで取れなかった」。真弓監督は努めて平静を装ったが、表情は硬かった。

 球団は試合前に訃報を公表した。「名物オーナー」として慕われた久万元オーナーが9日に死去していた。85年の日本一を経験。低迷期を経て、野村、星野という大物監督を招聘(しょうへい)して再建も果たした。21年に及び、球団の発展に尽力してきた人物だ。ひとつの大きな時代が終わった。真弓監督も沈痛な表情で故人を悼んだ。

 「長くオーナーをされて、お世話になりました。すごく野球に熱心な方だった」。その功績を無駄にしないためには、勝利が何よりも必要。「タイガースが強いことが一番だから」。この日の供養星はもちろん、白星を積み重ねることを誓った。

 しかしゲームが始まると、投打の歯車がかみ合わなかった。先発スタンリッジがまさかの今季最短KO。打線は追い上げるが、5回以降は勢いを失った。得点圏に走者を進めるが、あと1本が出ない。試合前には南球団社長が指揮官を激励。「切り替えてやっていこうという話。監督もそのつもりだった」。ヤクルト戦3連敗のショックを払拭(ふっしょく)し、逆転優勝に望みをつなごうとフロント、現場は一体となった。それでも悪い流れを止めることはできなかった。

 常勝軍団を作り上げていくためにも、ここでシーズンをあきらめるわけにはいかない。真弓監督は言葉を絞り出した。「勝ててないから、(状態は)良くはないが、今日ももうひとつ出れば、というチャンスは作っている。粘って、雰囲気が変わるまで…」。最大の正念場を迎えたのは事実。残るは34試合。死力を尽くして、追い上げなければならない。【田口真一郎】