<広島12-4阪神>◇19日◇マツダスタジアム

 「スミ4」で逃げ切れない。真弓阪神が今季ワースト21安打で12失点する投壊で逆転負けを喫した。先発ジェイソン・スタンリッジ(32)は素手を出した打球をつかみ損ねて内野安打とし、3回途中に5失点KOされた。これで8戦連続白星なしの4連敗。6、7月と2カ月連続で月間MVPを受賞した輝きを失い、今季限りの解雇もちらつく危機的状況に追い込まれた。

 スタンリッジが今季最悪となる「投壊」の引き金を引いた。初回に大量4点を先制した直後。先頭の東出から3連打を浴び、嫌な雰囲気が漂った。

 ここは何とか2失点にとどめたが、3回に崩れた。2死一、三塁で赤松との対決。強襲の打球に素手の右手を伸ばした。つかみ取れるはずもなく、はじいてタイムリー内野安打。「手を出さなければ、ショートが取れていた。すべてにうまくいかなかった」。後悔先に立たず-。ここで降板となった。

 シーズン中盤までチームを引っ張ってきた右腕の「失速」は、最近の先発陣の不安定さを表している。6、7月と2カ月連続で月間MVPを獲得したが、その後は勝ち星から見放された。7月27日中日戦の勝利を最後に4連敗。その間、5回持たずのKO劇は3度もある。

 強襲の打球に手を出してしまったのも、勝ちたい焦りのせいか。直球はきれを失い、変化球も甘い。「表現できない。(ブルペンは)何も問題ないが、仕事ができなかった」。16日にはブルペンにこもって、久保投手コーチと1時間半のフォーム修正を行ったが、結果は出なかった。困惑した表情で思わず、こんな言葉までこぼれ出た。

 「迷子になったような感じだ」

 道に迷う、とは皮肉な表現だ。スタンリッジはオフに単年の年俸1億円プラス出来高払い(金額は推定)で契約を更新した。先発陣の軸で力投してきたため、基本的には来季も契約する方針だ。しかしここにきての連続KOはあまりにも心証が悪い。昨年も8月は防御率3・38、9月は4・91。2年続けて失速している。前日、11勝目を挙げたメッセンジャーとの勢いの差は歴然。この先も背信投球が続けば、今季限りで解雇される可能性も出てくる。

 勢いづいた広島打線を中継ぎ陣も止められなかった。2番手の小嶋は2者連続四球で押し出し失点。「まだ自分の力が足りない」とうなだれた。緊急登板ではあったが、制球が定まらずに精彩を欠いた。左腕藤原も2イニング目につかまって3失点。繰り出す投手がフリー打撃のように、次々と気持ちよく打たれた。終わってみれば、被安打は今季ワーストの「21」。12失点はセ・リーグ球団との対戦では最悪だ。

 「打たれすぎやな…」。真弓監督は険しい表情でひと言つぶやき、わずか5秒で会見を打ち切った。帰りのバスまでの道のりは、何を聞かれても無言を貫いた。シーズンは残り30試合を切った。投打の歯車がかみ合わない現状に、いら立ちだけが募る。【田口真一郎】

 ◆今季ワースト

 阪神の被安打21本は09年6月17日・日本ハム戦(京セラドーム大阪)以来で2年ぶり。先発下柳から渡辺、江草、阿部、筒井の継投が安打を浴び5-10で敗れた。2ケタ失点は6月5日オリックス戦(3-14)、同12日西武戦(5-11)に続き今季3度目でセ・リーグ相手では初。逆転負けは今季19度目となるが、これまでは3点リードが最大(5月4日巨人戦=3-0→3-4)で、4点差逆転負けも初となった。