<阪神4-4巨人>◇23日◇甲子園

 勝てた。誰よりも阪神真弓明信監督(58)がその思いを強く持っていた。5回まで0-3、追い上げた8回表に痛恨の1失点と次第に高まる敗色ムードを、総力戦で振り払った。最後は西村憲投手(24)をサヨナラの代走に送った執念は、やはり、勝利という果実が欲しかった。

 「代走西村」のコールに甲子園がどよめいた。2年連続のサプライズ起用は総力戦の証しだった。昨年9月9日中日戦でも野手を使い切り、西村を外野手で起用。この日も9回裏に緊急でブルペンからベンチに呼び寄せた。2死一、二塁で二塁走者の桧山に代わって、中継ぎ右腕を指名。サヨナラのホームを踏めなかったが、野手を全員使い切ってのドローだった。

 「あそこまでいってるから、負けなくてよかったが、最初から考えると、追いつけるから、勝てた試合だった」

 終盤に執念の猛攻で追いついたが、真弓監督は良しとしなかった。中盤に巨人の守備が乱れ、阪神にとってはつけいるチャンスはあったが、生かせなかった。劣勢のまま、終盤を迎える展開で控え選手の「カード」を切らざるを得なくなった。

 不運も重なった。前日22日に狩野が腰を痛めて、登録を抹消。きょう24日に関本を1軍昇格させるため、野手の枠がひとつ空いていた。1日だけ2軍から選手を呼ぶ案もあるが、木戸ヘッドコーチは「そういう考えもあるが、関本の状態もある」と説明した。

 代走西村は苦肉の策となったが、結果は昨年同様に引き分けに終わった。「僕と小嶋が行くかもしれない、ということだった」と当事者は振り返った。負ければ、3位巨人に3ゲーム差を付けられていた。引き分けでも痛いが、第2戦につながる内容だ。関本の復帰も濃厚。頼れる男も加わり、総力戦はまだまだ続く。【田口真一郎】