<横浜3-3中日>◇18日◇横浜

 中日落合博満監督(57)が、球団初のセ・リーグ連覇を成し遂げた。ヤクルトをかわして首位に立ち、優勝マジック1で迎えた18日の横浜戦に引き分けて優勝を決めた。

 「野球って何点取れば勝てるんだ?」

 ある時、落合監督に聞かれた。答えがあるはずもない。すると、こう続けた。

 「10点取っても、11点取られたら負けだよな。でも相手を0点に抑えれば、1点取れば勝てるんだよ。打者なんて、打っても4割届かないんだ。だったら、どっちが確率が高い?」

 「守りの野球」-。打撃を極めたがゆえ、その限界を知る3冠王がたどり着いた勝利の鉄則だ。沖縄のブルペンを倍の広さに改造した。トレードも、戦力外通告も投手は極力、回避した。先発野手を決める時、最優先する能力は「守備力」だった。あの立浪も、中村紀も、外した理由は守備範囲の衰えだった。

 守りへの執念が最も表れたのは荒木と井端の二遊間コンバート。6年連続ゴールデングラブ受賞中の2人をあえて配置転換した。その真意を今、こう語る。

 「あいつら、打球を目で追い始めたんだ。それまでは足で追っていたのに、横着しだして、捕れた打球も捕れなくなったんだ」

 当人たちも次第に真意を知った。荒木は言う。

 「他の人の目はごまかせても、あの人の目はごまかせない。だから、監督に野球をやめろと言われれば、今すぐにでもやめるよ」

 落合監督は自宅にかかっている1枚の絵を指した。「オレは選手の動きを1枚の絵にしちゃうんだ。それをずっと同じ場所から見る。近くで見るとぼやけるから遠くから眺める。そうすると次第に頭や、手があるべき場所からずれてくる。そうなれば、その選手はおかしいということだ」。

 守りの野球という方法論を、その眼力で磨き続けた。これぞ落合野球の神髄だと思う。【中日担当=鈴木忠平】