再生工場が新規オープン!

 阪神の来季1軍コーチ昇格に決まっている藪恵壹2軍投手コーチ(43)が、鳴尾浜で秋季練習がスタートした30日、今季不振に終わった安藤、小林宏、久保田の3投手の再生に強い意欲を見せた。「1軍デビュー」する11月3日の安芸・秋季キャンプから密着し、実力派右腕の復活をアシストする。

 2軍から1軍投手コーチへと職場を移す藪コーチがさっそく重要な任務を担う。本来の実力を発揮できずにいる安藤、小林宏、久保田の再生だ。

 来季への始動となる秋季練習初日。藪コーチはブルペンで目をギラつかせていた。視線の先ではベテラン3投手が並んで、一心不乱にミットに向かって腕を振っていた。

 まだ来季のコーチングスタッフは発表されていない。この時点の肩書は「2軍コーチ」のままだ。発表前だけに「詳しいことはまた後日…」と多くを語ろうとしなかったが、気持ちはとうにシフトチェンジしている。

 11月3日から始まる高知・安芸での秋季キャンプには、3投手も参加する。安藤は昨年からの右肩痛が尾を引いて1試合登板に終わった。藤川球児とのリリーフトリオ「トリプルK」を期待されていた小林宏、久保田も安定感を欠き、勝負どころの終盤戦では戦力になれなかった。3投手の不振はチーム成績に響いた。逆に、復活できればどんな補強よりも心強い。

 藪コーチは復活プランをすでに練っている。「ベテランなので『自分たちで考えて計画を立ててくれ』とは伝えてある」と信頼を寄せるが、選手任せにするわけではない。

 一方では久保田と話し合い、投げ込みを減らしたことが不振の一因になっている可能性があると認識。ベストの練習法を導くため、相談役としても手を差し伸べていく。

 この日、安藤のブルペン投球を見て驚いた。「素晴らしかった。久しぶりに往年の投球を見た。今年一番。直球がベース上でね(勢いがあった)」。完全復活できると、背中を押される出来事だった。

 阪神のエースとして活躍した藪コーチは日本通算84勝。メジャーでもアスレチックス、ジャイアンツで7勝した一方で、メキシコリーグやマイナーでもプレーした苦労人だ。米国での「浪人」生活から、メジャー復帰をつかんだ経験も、貴重な教材になる。

 「明日あたり、どういうキャンプにしようか彼らと確認しますよ」。安藤が、小林宏が、久保田が、甲子園で躍動する姿を見せたい-。選手よりも大きな体には、情熱とアイデアが詰まっている。【柏原誠】