金本、城島にも遠慮しまへんで!

 阪神は10月31日、野球評論家の有田修三氏(60)のヘッドコーチ就任を発表した。兵庫・西宮市の球団事務所で会見した新ヘッドは、主力にも積極的に意見していくことを宣言。聖域をなくし、チームを1つにする考えを語った。新ヘッドは3日の秋季キャンプから指導を開始する。

 厳しい論調で知られたベテラン解説者の“舌鋒”が阪神優勝のカギになる。会見に臨んだ有田氏は、絶対的な主力選手の金本や、城島に対しても、遠慮なく意見を述べていく考えを示した。

 「タイガースというチームがよくなるように、と思っている。いいものと悪いものをハッキリと選手に教える。それが愛情です。ベテランでも関係ない。そうしないとアカン。そこをうやむやにしていたら優勝できない」

 朝日放送の解説者を12年間務めてきた有田氏は、毎年、年間を通して阪神の戦いをつぶさに追いかけてきた。阪神でプレー経験はないが、92年から4年間阪神バッテリーコーチを務めるなど“OB目線”でグラウンドを注視してきた。

 その分、論調も厳しくなった。今季の序盤、左膝の状態が悪く調子が上がらなかった城島に対しても容赦せず、マイクを通して捕球ミス、配球ミスなどを指摘した。これからは同じタテジマを着て戦うことになるが、その姿勢は変わらない。変えないことが選手のため、チームのためになると信じているからだ。

 金本、桧山、新井、城島、鳥谷、平野…。投手では藤川や能見、久保。阪神には実績豊富で成熟した選手が多い。有田ヘッドは、主力選手の能力や考え方を重んじた上で、必要なアドバイスや意見を遠慮なく述べる構え。そこから意思の疎通を図る。

 プロ2年目から指導を受けた元近鉄監督、西本幸雄氏の影響が大きい。「西本さんがいつも言っていたのが、ベンチも2軍も全員が1つにならないと優勝できないということ。1人でもはぐれたら優勝できない、と。城島がいないと優勝はできない。城島も金本もいる。ベテランも1つになること」と口調を強めた。

 コーチ間の連係も重要視する。「コーチ同士がケンカしてもいい。お互い妥協したり傷をなめ合わずやることを教えていきたい」と、徹底的に議論できる環境づくりに努める。

 和田新監督は、以前のコーチ時代に選手だった関係。「静かに見えるが、いざとなったときの闘志は何度も見た。和田監督と選手を盛り立てて、絶対優勝できるようにやっていく」。7年ぶりのリーグ制覇へ。新加入のベテラン指導者は聖域なき対話路線をしく。【柏原誠】

 ◆有田修三(ありた・しゅうぞう)1951年(昭26)10月21日、山口・宇部市出身。宇部商から新日鉄八幡を経て73年ドラフト2位で近鉄入団。捕手として75年から2年連続でダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)受賞。86年に巨人移籍。90年からダイエー(現ソフトバンク)に移り、91年限りで現役引退。実働18年で通算打率2割4分7厘、128本塁打、430打点。阪神、近鉄でバッテリーコーチを務めた後、野球評論家で活躍。右投げ右打ち。