阪神は4日、兵庫・西宮市の球団事務所で今季フリーエージェント(FA)権を取得した新井貴浩内野手(34)鳥谷敬内野手(30)の2選手と残留交渉を行い、次の権利取得まで最低4年間は流出の心配のない「宣言残留」の希望を伝えた。新井に3年9億円、鳥谷に4年12億円を提示したとみられる。いずれも結論を保留したが、阪神側は日本シリーズ終了までのスピード決着を目指す。

 この2人がいなければ来季の構想など成り立たない。阪神が鳥谷、新井の引き留めに本気を出した。交渉役の沼沢正二球団本部長(53)は、最初の本格交渉から球団側の気持ちを余すことなく押し出した。

 「FA権を行使した上で残留していただきたいと伝えました。本人たちも球団の気持ちは分かってくれている。選手の権利ではあるけど、来年、再来年とFA交渉がないという形で、4年は残ってほしい」

 FA宣言した上で残留してくれれば、権利の再取得まで最短でも4年間かかり、その間は他球団に移籍される恐れがなくなる。「3番遊撃」の鳥谷、「4番三塁」の新井。黄金時代の構築のために、2人にはどっかりと中心に座ってもらわなければならない。

 戦力的にも、また長期的なチームづくりを見据えても、流出の可能性がつきまとう状況が何年も続くことはマイナス。「宣言残留」の希望は、まさに両選手への高い評価の表れだ。契約条件も最大限のものを用意した。鳥谷には4年12億円、5学年上の新井には年齢を考慮して3年で9億円を提示したとみられる。

 阪神は和田新監督のもと、V奪回を目指して新体制が発足したばかり。沼沢本部長は和田監督から「残ってくれないと来季の戦いが成り立たない」と強く念押しされていたことを明かした。「頼みますよ!」と背中を押されたという。

 和田監督は、キャンプ地の高知・安芸で鳥谷が交渉した事実を聞き「鳥谷がチームを引っ張っていってくれると信じている。あとは球団に任せている」と期待を込めた。新井に対しても10月31日に直接、慰留の意思を伝えている。

 同本部長はスピード決着にも強いこだわりを見せた。FA宣言ができるのは日本シリーズ終了後の翌日から。だが球団はそれまでに残留という結論を導きたい希望を持っている。

 和田監督の直接出馬について「考えられる」としながら「でも、監督がお出ましにならないように私が全力を尽くします」。キャンプは21日まで。監督が出馬できるのは22日以降。それまでの決着を目指す。

 鳥谷、新井はそろって結論を持ち越した。球団の熱意を受け止めたが、大事な権利だけに、時間の許す限り慎重に検討を重ねる方針は変わらない。

 今回の交渉は、同本部長が2人が自主トレで甲子園クラブハウスを訪れていたことを知り、数十分ずつ話し合ったもの。次回交渉は来週中にも行われる。

 「とにかく残ってもらいたい。チームの中心として引っ張っていく役目を担ってほしい。新監督と我々フロントの思いをぶちまけたつもりです」。主軸のダブル残留へ、阪神が猛烈アタックを開始した。