先発あるぞ!

 今季救援で球団新人最多記録となる62試合に登板した阪神榎田大樹投手(25)が、先発転向へバットで猛烈アピールした。秋季安芸キャンプで9日、フリー打撃に臨み豪快アーチ。和田豊監督(49)も来季の先発転向について「可能性はある」と明言した。今キャンプ、ノースローで走り込む左腕が、意外な武器でデモンストレーションに成功した。

 榎田が先発転向へ強烈なアピールをかました。150キロ連発?

 七色の変化球?

 デモの舞台はマウンドではなく打席だった。球場下にきらめく太平洋に向かって、打球が一直線に伸びていく。投手全員で行った打撃練習で、榎田が打者としての片りんを見せた。伊藤トレーニングコーチが投じた20球目をミートし、豪快な1発が右翼ネットを揺らした。

 実は高校通算5本塁打の“スラッガー”だった。「大学に進学する時にバッターをやるか、ピッチャーをやるかで、足がなかったからピッチャーにしたんですよ」。片岡打撃コーチは「榎田なんかいいバッティングしてたね。久々にやっても片りんはある」と左腕の打撃センスに太鼓判を押した。阪神の投手は08年のボーグルソン以来、公式戦の本塁打は0。日本人投手では04年福原以来、スタンドインから遠ざかっている。

 救援で62試合に登板した榎田だが、公式戦の打席に入ることはついになかった。4月5日の練習試合・巨人戦で1度だけ打席に入ったが三振に倒れた。野手顔負けの豪快な1発は、先発転向もOKのアピール材料になったはずだ。

 榎田

 打つというよりは、状況に応じてバントの場面が出てくる。バスター(のサイン)があった時に、最低限の役割ができるようにやっていけば、先発でも中継ぎでもできると思う。

 ポジション白紙を掲げた和田監督は、榎田が来季先発にまわることも視野にあるようだ。「可能性はあるからね。可能性があることは練習しないといけない。そういうことで可能性が出てくることもある」と話した。

 シーズン終了から一夜明けた10月25日、榎田はチーム事情が最優先としたうえで「先発をしたいというのはある」と思いを口にしていた。先発にまわった場合、他の投手の打撃も参考にしていくつもりだ。

 榎田

 内海さんはバントにしても工夫してスクイズとかセーフティースクイズとかやってるし、沢村もバッティングがいい。由規君は阪神戦でセーフティーやったりしている。多少惑わせる工夫ができれば、チームの打線のつながりになっていくんじゃないかなと思う。

 秋季キャンプはノースローを継続し、シェイプアップ合宿と位置づけて下半身を強化中。まずはバットで先発転向アピールに成功。来季は甲子園の打席に立つ榎田が見られる!?

 【岡本亜貴子】