巨人清武英利GM(61)が、渡辺恒雄球団会長(85)にかみついた。11日、都内の文科省記者クラブで記者会見を行い、渡辺会長が来季のヘッドコーチにOBの江川卓氏(56)を招聘(しょうへい)するプランを進めていることを暴露した。チームはすでに岡崎郁氏(50)をヘッドコーチとして宮崎秋季キャンプを実施している。現チームの人事を翻すプランに対して清武GMは全面的に反対。自身の解任をも辞さない覚悟で、渡辺会長の翻意を求めた。

 渡辺会長からヘッドコーチ候補に挙げられた江川卓氏は驚いていた。都内で報道陣の取材を受け「(午後)3時過ぎに新聞記者から電話がかかってきて、初めて騒動を知った。渡辺会長とは数年会っていないし、電話もしていない。渡辺会長が誰かに『僕のところに行ってこい』と話をしたかもしれないが、僕のところには届いていません」と、渡辺会長との接触を完全に否定した。

 前日には契約する日本テレビの関係者と会食し、来季契約について「よろしく」と言われたという。この日は都内へ散髪に出掛け、上下ジャージーにベンチコートを羽織り、足元は運動靴という姿。「どう見ても誰かに会っていたという格好ではないでしょう」とジョーク交じりに話した。

 複雑な心境を吐露した。「野球人として引退してからも名前が挙がるのは光栄ですが、こういう状況では(コーチ就任は)今年は難しい。岡崎さんにも迷惑がかかってしまった」。78年のドラフトで「空白の1日」を利用しての巨人入団を主張し、社会問題にまで発展した。江川氏は一時的に阪神に入団し、その後に巨人小林繁投手(故人)と交換トレードとなった。「小林さんに迷惑をかけたことはずっと心に引っかかっている。あの時は当事者だったので責任を感じている。今回は僕はまったく話を知らなかった」。

 1人の巨人OB、球界関係者としてと前置きし「早く騒動が収まってほしい」と願っていた。【斎藤直樹】