巨人の激震が止まらない。大村三郎外野手(35)が、今オフにフリーエージェント(FA)権の行使を視野に入れていることが17日、分かった。6月にロッテからトレード移籍し、初打席で本塁打を放つなど勝負強い打撃を見せた。ただ、巨人での出場は48試合に終わり、出場機会を求めての権利行使に傾いている。前日16日、鶴岡一成捕手(34)と高橋信二内野手(33)のFA移籍の可能性が浮上。3人同年FA流出ならば球界初の事態だ。今日18日、都内の球団事務所で清武英利GM(61)と今オフ2度目の交渉を行う予定だ。

 「つなぎの4番」の異名を持つ大村が、FA権を行使する可能性が出てきた。FA宣言の申請日が迫ってきたこの日、「野球選手は試合に出てナンボだと思う。このまま終わりたくない。巨人で試合に出るのがベストだけど、どこかで勝負したい気持ちもある」と、初めて心境を吐露した。5日のジャイアンツ球場での練習後には「まだ時間はあるし、どうしようかと少し考え始めたぐらい。時期が来たら決めたい」と話していたが、出場機会を求める気持ちは強く、移籍への思いも日々強くなっているようだ。

 権利行使となれば、10月に重光オーナー代行が“ラブコール”を送ったロッテだけに限らず、他球団も獲得に名乗りを上げる可能性は十分にある。この日、FA権を保有する選手について、清武GMは「出場機会を求めるのは仕方がないというか、選手にとって大事なのはやはりグラウンドに出ること。僕は痛いほど分かる」と一定の理解を示しつつも「(巨人に)いて、頑張ろうと、すでに話はしています」と慰留に努める方針を示した。

 12球団を見渡しても、かつてない事態だ。前日16日には鶴岡が行使の意向を示し、高橋信も検討中であることを明かした。過去、巨人では駒田、小久保の2人しか国内他球団へのFA移籍がなかったが、この2日間で一気に3人も移籍する可能性が浮上した。93年のFA制度導入後、2人流出の例は9件あるが、3人が同時に移籍した前例はない。これは盟主の求心力低下にほかならない。

 大村は6月にロッテから移籍。7月1日中日戦での移籍後初打席では本塁打を放つなど活躍も見せたが、48試合の出場に終わった。巨人への不満はない。ただ純粋に、さらなる出場機会を求める気持ちが強い。今日の交渉で、清武GMに対し、熱い思いと、権利行使の意向を伝える可能性が高い。

 清武GMはこの日、前日の交渉を振り返り「高橋(信)君が言うには、巷間(こうかん)言われている『巨人軍の補強失敗』という評価に対し、自分はその一員だったので、責任があるし、なんとかリベンジしたい気持ちもある」と、話した。大村、鶴岡、高橋信の3人は、FA権行使と、「清武声明」を端にした一連の騒動とは無関係であることを強調している。ただし、これまでのチーム編成にポジションの重複があることが、遠因として横たわっている。また、FA権を持つ選手をシーズン途中に緊急補強した影響も見逃せない。3人流出となれば、清武GMの足跡と、決して無関係ではない。

 ◆大村三郎(おおむら・さぶろう)1976年(昭51)6月1日、岡山市生まれ。PL学園から94年ドラフト1位でロッテ入団。ロッテ時代の登録名はサブロー。巨人移籍で現登録名に変更。ゴールデングラブ賞2度、球宴出場2度。昨年から今年6月の巨人移籍までロッテの選手会長だった。通算1454試合で打率2割7分、1139安打、110本塁打、550打点。181センチ、85キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億3000万円。家族は夫人と2男1女。